うつつのはなし、[短編]01 (ページ8)

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scene.∞-2 / mtrz ページ8

「食べるの下手っぴ…」
「クリーム勿体なー」

わたしとリリーさんの洩れた言葉と裏腹に、溢れだしたクリームに盛山さんは襲われていた。

「おまえら、見てへんで助けてくれへん？！
シュークリーム爆発して俺クリームまみれなんやけど！」

「シュークリームが爆発」その言葉選びにジワジワと面白さが込み上げてくる。

「ふはっ、モリシ…ふっふっ、待ってそのままでおってや」

「ちょお！何スマホで撮ろうとしてんねんっ」

「リリーさん、ふふっ、それは駄目ですって…あははっ」

「Aも、笑ってんやん！」

笑いのツボに入ってしまった私たちとは裏腹に、盛山さんは如何にかその手から溢さないようにモゴモゴ頬張りながら、咄嗟に受け止めた手のひらはクリームまみれになっていた。

「はぁーおもしろ。そうなるの絶対解ってたやん。モリシ可愛いアピールしてるん？」

「なわけあるか！てか、ほんまにリリーそこのウェットティッシュとってくれや」

「はいはい」

「紙皿持ってきますね！盛山さんそのまま手キープしててくださいね！」

「おん。頼むー」

天然行動で言うとリリーさんの方が発動すること多い。

不本意だろうけど、盛山さんらしからぬ珍しい姿に、リリーさんの言う通りにあざと可愛いく私の目にも映っていたように思う。

他のケータリング用の紙皿を手に取り、楽屋へ戻る。

「持ってきました！コレに乗せてください」

「ありがとうなーふう、勿体ないから食べよ。んむっ」

紙皿へ半分になったシュークリームを乗せ、指についたクリームを舐めとってる。あ、なんか…

「やらしいな」
(色っぽいなぁ)

「あほか、何言ってんねん」

「Aもそう思わん？」

「えっ、あ…」

リリーさんの口ぶりはからかって反応を楽しんでいる。それは解ってはいたけど、咄嗟に言葉が出ない。その代わりに、どんどん顔が熱くなる。

盛山さんに対して、異性感の気持ちが芽生えてる訳ではないのに、つい口元・指が視界に映してしまい変に意識してしまう。恥ずかしい。