うつつのはなし、[短編]01 (ページ7)

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scene.∞-1 / mtrz ページ7

※恋愛色は無し
mtrzのお二人と過ごすひと時と踏まえた上でどうぞ。
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「あれ今、人気で買えへんヤツやろ」

リリーさんが先ほど通りかかった、差し入れコーナーを思い出したのか口を開く。

「差し入れ下さった方が、そのお店の社長さんらしいですよ」

「そうなんや、有難いなぁ。せっかくやし、貰ってこよか」

隣で聞いていた盛山さんは、差し入れを貰いに席を立つ。

「モリシが一番見とったよな」

「ふふっ、一人だけ通り掛けに貰ってくるのなんか照れくさいですもんね」

「何個持ってくるやろ」

「流石に一つじゃないですか？」

「ああ、そういうことやなくてさ」

「貰ってきたでー」

Aの分、とわたしの手に、シュークリームが包まれた包装を乗せてくれる。

「わたしも貰っちゃって、良いんですか？」

「当たり前やん。劇場・事務所関係者様ってなっとったし安心しいや。なあ、リリー」

「おん。モリシ貰ってこなかったら、俺の分Aと半分こする予定やったけどな」

「なにカッコつけしよう思ってんねん」

「ふふっ。ありがとうございます、せっかくなので…頂きますね！」

手に収まっている包装を眺めて頬が緩む。
なにより、一緒にと思ってくれた二人の心遣いに胸が暖かくなる。

「てか、これ重いけどホンマにシュークリームなん？」

リリーさんは手乗ったソレを、ポンポンと上下させ重さを確かめている。

「中いっぱいに、詰まってるクリームが売りみたいなのテレビの特集で言ってたけどどうなんですかね？」

「食べたらわかるやろ？」

「ですね」

盛山さんはガサリと包装を開き、口を開けてかぶり付いた―…

「あーん、ぶふっ？！」

「「あ」」

中いっぱいにクリームが詰まっている、つまり豪快に噛みつけば薄めの生地をソレは突き破る。