scene.∞-L-side1 / lily�� ページ1
lily+mrym の続きです
分岐...lily side
「見つけた」
静けさに包れた劇場内に、凛とした声が響く。発した声の主は、ヒョイと舞台から跳び降り客席まで歩いてくる。
「リリーさん…」
「Aはわかりやすいよな。何かあると、とにかく掃除して気を紛らわせてるでしょ」
動いていれば頭を空っぽに出来る、昔からの癖―…どうして分かってしまうんだろう。
「わかるよ。見とるから」
「…」
ほらまた、言わなくても思ってる事が見透かされてしまう。
「見とったからさ…モリシがAのこと目で追ってるのも、この前からAがモリシに対してぎこちない雰囲気になっとるのも」
可動式の座席を引き出しボフッと座る。こちらを見ることもなく言葉を続けていく。
「俺の勘当たってたやろ」
「だいたいは…合ってます」
「うん。俺も、二人が好き合ってるならええって思ってんよ」
「…」
「やけど…さっきの何？」
チラッと表情を伺い見るが、真顔のままで何を考えているかわかない。
「…リリーさん？」
「他の奴の前でも、おまえはそんななの」
「どういう意味ですか」
「俺じゃなくても、あんな風にキス許すのって言ってんの」
「ちが、います…」
「じゃあ、なんですぐ逃げなかったん」
「…やめて、くれなかったじゃないですか」
「本気で嫌なら、玉蹴るとか噛みつくでもするやろ」
「リリーさんに、そんなこと…出来ませんよ」
「はぁ…」
互いに黙ったまま時間が過ぎていく。
「―…Aはさ、モリシのこと好きなんじゃないの」
「恋愛感情の好きではないですよ」
「断ったの」
「さっき、掃除用具取りに行く途中に会ったので」
「っぷは、え？そこに置いてあるモップとバケツ持って？」
「あ…たしかに、酷い格好してますね」
「あはっ、やば…くふふっ、その状況…ふふっ」
「ちょ、そんなに笑わなくても！」
ツボに入ったのか、肩を震わせて笑いを耐えきれない姿に思わずいつもの調子で強めにツッコんでしまう。
「やー、だってさぁ…あー、もう…腹いたい…ふはっ」
「もう！笑うの禁止！」
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作者名：hisui | 作成日時：2021年1月21日 4時
