純心の罪【前編】《ジャックハート》 ページ10
「♪薔薇の花を〜赤く塗ろうよ〜
……ってそんな事したら女王の逆鱗に触れるに決まってるのに。バカだよねぇ。」
今日も誰かの首を刎ねた。
ジャックハートは斧を引きずりながら、うわ言の様に言葉を零す。
これを歌っていたのは確か、アリスがワンダーランドに来た時のトランプの庭師。
彼の首を刎ねたのも確かボクだった、もうずっと前の事だけど。
『アリス』
女王を怒らせ、裁判の判決を待たず結局は夢から醒めてしまった少女。
女王は今でも彼女を探している。
アリスを仕留め損ねてからと言うもの、女王はどこか悲しげで。ボクは女王の憂いを少しでも晴らす為、前よりも多く首を刎ねるようになった。
その度、女王も褒めてくれるので嬉しかった。
なのに何故か心に残る違和感。
いつも歌で誤魔化す。
「♪薔薇の花を〜…赤く塗ろうよ〜……」
今日は違和感が消えない。歌が途切れる。
「♪どうして塗るのよ、白い薔薇を?」
「!?」
途切れた歌を可愛らしい少女の声が繋ぐ。
「アリス!?」
「いいえ。私はアリスじゃないわ。」
そこに立っていたのはアリスとは全然違う黒髪の少女だ。
「まぁ、迷い込んだ人間と言う意味では同じかもね。」
「えーと…、君はなに?どうやってお城に入ってきたのかな?」
ボクは引きずっていた斧を持つ手に力を込める。
「あら、意外。そんなどうでも良さそうな事聴くのね。
正面からに決まってるじゃない。招待されたのよ、貴方のだぁい好きな女王様に。」
「あっそ、侵入者かと思っちゃったよ。」
この少女はアリスとは違う。
アリスは純粋な娘だったけど、この子はなにかを抱えていてまるで自ら純心を捨てたかのような……
瞬間にそう感じた。なんか全部見透かしてるように笑う瞳と目が合う。
「ちょっと頼まれ事があってね、私は貴方に会いに来たの。
ねぇ、魔法のかかったハートのジャックさん?」
気付いたら、少女の首の真横まで斧を振っていた。
所存、脅しだ。
女王のお客にこんな事したらボクが殺されるけど、ボクの身を守る為にはこうするべきだと、本能が告げた。
「どうして、それを、知っているの?」
「私はこの世界の事なんでも知ってるわ。なんてね、冗談よ。
しかし、とても早かったわ、今の動き。ちょっとびっくりしたもの。だけど、お客さんにこんな事したら貴方の首が空を跳ぶんじゃない?」
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れいれいだぅ〜 - フェロー様イケメンなの凄いわかります!フェロー様の出てくる話ももっと見たいです!更新頑張ってください!! (2020年3月15日 3時) (レス) id: ed2d22e147 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 白狼ラトさん» 初めまして!リクエストありがとうございます!返信が遅くなってしまい、大変申し訳ありません!それでもはV様との甘いストーリーの制作をさせて頂きます! (2018年3月9日 19時) (レス) id: a1682b21b7 (このIDを非表示/違反報告)
白狼ラト(プロフ) - 初めまして!早速ですがリクエストでMrVで甘いお話をお願い致します!夢主はマスターヴィランズです! (2018年2月19日 21時) (レス) id: cd54c7533b (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - みゆきさん» コメント、リクエストありがとうございます!私も手下ロスで小説を書いているので同じ方がいると嬉しいです笑 エイトフットの甘い小説ですね、時間が掛かってしまうかも知れませんが頑張りますね! (2017年12月29日 14時) (レス) id: a1682b21b7 (このIDを非表示/違反報告)
みゆき(プロフ) - リクエストでエイトフットとグランちゃんの甘めストーリーをお願いします!ハロウィンが終わっても手下が頭からはなれません!なので手下の小説を読むとハロウィンをおもいだせて嬉しいです!これからも更新頑張ってください! (2017年12月29日 10時) (レス) id: 27fb89c1db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:翡翠 | 作成日時:2017年11月16日 20時