泡沫バスルーム2 ページ36
「…ぃ…………せ……」
なにかがぼんやりグランの耳に届く。
「おい……を……せよ………」
ちょっと待って、今少し苦しいの。
「おい…早く目を覚ませよ……グラン……!!!!」
「けっほ、ごほっ!」
誰かの呼び掛けがはっきり聴こえたと同時にグランは咳き込み、水を吐く。
気付くと、グランは浴槽脇のタイルの上でエイトフットに抱きかかえられていた。
「グラン!!!!」
彼女の肩からは見覚えのある蛸足のついたジャケットが掛けられていた。恐らく彼が気を利かせてくれたのだろう。
そしてその彼自身は、彼の特徴的な紫のワイシャツをびしょ濡れにし、渦の様に整えられた髪も濡れてぐしゃぐしゃになっていた。
何よりいつも不機嫌そうに眉間にシワを寄せてる顔を心配そうに歪めていた。
「エイ…ト……フ、ト…?」
「あぁ、そうだよ!!エイトフットだ、バカ野郎!心配かけやがって……!!!!」
「わた、し……なに、して……?」
「はぁっ!?おまっ、自分が風呂で溺れてたの覚えてねぇのか!!?」
「溺れ……?
私、確か…潜って……それで…眠く……」
「「…………」」
沈黙。
グランも自分のしでかした事に気付いたようだ。
「……〜っこのバカ!!!!
オレじゃねぇんだから、人間の姿で湯船ん中で寝たら溺れるに決まってんだろ!!!!」
「ご、ごめんなさい……」
「ホントだよ…2度とこんな事すんなよ?」
「うん……。ねぇ でも、なんで溺れてるの、分かったの?」
「ん?あぁ、風呂出来たっつーからどんかもんか見に来たんだよ。でも脱衣室にお前のワンピース置いてあったから1時間ぐれぇ外で時間潰して待ってたんだよ。んで、見に行ったらまだ服はあんのに浴室から音はしねぇし、見てみたらこのザマだ。
人工呼吸しても心臓マッサージしても反応しねえ時はマジで焦ったぜ。…ったく、オレがいて良かったな。死ぬとこだったぞ。」
「人工呼吸……」
「恥ずかしがってんじゃねーよ…」
グランは頬を赤く染め俯く。
「うぅ……」
「…そろそろ行くか湯冷めすんぞ。
ほら、部屋まで送ってやっから着替えろ。」
エイトフットは彼女を抱え直し立ち上がる。
「えへへ、ありがとう……」
ふにゃりと弱々しく彼に微笑む。
泡沫の如く、消えずに済んだのは彼のおかげだ。
「ま、無事で何よりだ。」
そう笑う彼の頬もまたほんのりと赤い。
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れいれいだぅ〜 - フェロー様イケメンなの凄いわかります!フェロー様の出てくる話ももっと見たいです!更新頑張ってください!! (2020年3月15日 3時) (レス) id: ed2d22e147 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 白狼ラトさん» 初めまして!リクエストありがとうございます!返信が遅くなってしまい、大変申し訳ありません!それでもはV様との甘いストーリーの制作をさせて頂きます! (2018年3月9日 19時) (レス) id: a1682b21b7 (このIDを非表示/違反報告)
白狼ラト(プロフ) - 初めまして!早速ですがリクエストでMrVで甘いお話をお願い致します!夢主はマスターヴィランズです! (2018年2月19日 21時) (レス) id: cd54c7533b (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - みゆきさん» コメント、リクエストありがとうございます!私も手下ロスで小説を書いているので同じ方がいると嬉しいです笑 エイトフットの甘い小説ですね、時間が掛かってしまうかも知れませんが頑張りますね! (2017年12月29日 14時) (レス) id: a1682b21b7 (このIDを非表示/違反報告)
みゆき(プロフ) - リクエストでエイトフットとグランちゃんの甘めストーリーをお願いします!ハロウィンが終わっても手下が頭からはなれません!なので手下の小説を読むとハロウィンをおもいだせて嬉しいです!これからも更新頑張ってください! (2017年12月29日 10時) (レス) id: 27fb89c1db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:翡翠 | 作成日時:2017年11月16日 20時