【ディズニー】手下短編集。

泡沫バスルーム《エイトフットのジョー》 ページ35

｢♪〜〜｣

人形はご機嫌でホテル内を歩く。


その足取りはスキップを始め、鼻歌はハミングに変わる。


何故、彼女がこんなにご機嫌かと言うとこの古びたホテルに大浴場が試験的に用意されたからだ。


熱望したのはお風呂の素晴らしさを熱弁したスキャターとそんな彼女に乗せられたお風呂に興味深々のグランだ。


今日、初めて入るお風呂にグランは柄になく大はしゃぎしているのだ。





･

ちゃぷん

｢あったかい……｣

初めて入る湯船。

お湯に足をつけてみて不思議な感覚になる。
今までは備え付けのシャワーのみだったのだから、とても新鮮だった。



肩までお湯に浸かると束ねていない濡れた髪の毛が湯船に広がる。


｢これが…お風呂……。｣



スキャターの言った通り、お風呂ってなんて素敵なんだろう。これはいい経験をしたなぁ、とグランは顔をほころばせる。

｢♪〜〜｣

本日2度目ともなる鼻歌。
しかし広い風呂の中ではその鼻歌すらよく響く。

広いお風呂の中で脚を伸ばしても手を広げても有り余るスペースにグランは潜ってみたいと言う好奇心に駆られる。

いいや、やっちゃえ！

ざぷんっ、と音を立て湯船の中へ消えるグラン。


初めて潜ったお湯の中はなんとも不思議な感覚だった。

こぽぽ、と口から漏れる小さな泡。

眺めているだけでなんだかきれい。


こおお、と聞こえる耳を塞がれているような低い音。

水圧でなのかな、なんだか包まれてるみたいで温かい。




ふふっ、水中ってなんでこんなに素敵なのかしら。





静かで温かくて、心地よい。






眠くなるなぁ……。




















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