KAITO短編集 (ページ41)

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そしてカイトはヤンデレに挑戦しようとする(ヤンデレ要素ほぼ0)１ページ41

「マスターガ僕ノコトヲ見テクレナインダッタラ……」
「あ、ちょっとそれカイトアイスピック借りるね！」
「え!?」

　悲しきかな、僕の挑戦は脆くも儚く……

「ありがと。ちょうど錐必要だったの。また貸してね！」
「は、はぁ」

　まずマスターは何をやってるんだ!?

「カイト、ちょっと隣のゆかりからチェーンソーと、向かいのマユから斧借りてくるわ」

　めげるな、気を取り直すんだ僕！

「待って！マスター僕を置いて行かないで！」
「めーちゃんちょっとこいつお願い」
「わかったわマスター。バカイト、ロックアイスあるわよ」
「めーちゃんそれただの氷ね!? 僕そこまで馬鹿じゃないからね!?」
「あ、２丁目のテトからドリルも借りなきゃ」

　どうやらマスターは日曜大工でそれどころじゃないらしい。しばらくするとギィイイイイイ！やらガァアアアアア！やらゴンゴンゴンゴン！やら、明らかに近所迷惑な音が響く。

　僕はキャラ作りなんて諦めることにした。

「マスター、何作ってるんですか？」
「カイトの小屋」
「僕は犬ですか!?」
「別に。……そこ、おがくず飛ぶから危ないよ」
「あ、はい」

　小屋なんか作られたら、僕は入れられて閉じこめられてほったらかしにされてしまうんじゃないか？

　マスターから作業中だから近寄るなという視線を送られてしまい、暇になってしまった僕はなんとなくふらりと街を歩いてみる。

　バレンタインの飾りやらチョコやらで、辺りは平和的に真っ赤に染まる。とはいえ季節がら、チョコアイスが流行っているわけではないらしい。

　赤で満たされた街を蒼が一人歩くのも、それはそれであまりにも寂しいと気づいたのは、灰色の雲が蒼を覆った空を見上げたときだった。

　白鳥や悲しからずや空のあを

　海のあをにも染まずただよふ

　そんな歌があったっけ。

　あぁカイト悲しからずや空の灰

　街の赤にも染まずただよふ

……本歌取りとかいうんだっけ。やってみたけど、あまりうまくないなぁ。これだからめーちゃんにもバカイトとか言われちゃうのかもしれない。