26 もう少し(カイトside) ページ27
「琥珀!起きて!朝ご飯できてるから!」
マスターのいつになく明るい声が、僕の寝ている部屋へ響く。
「もー!開けるよ?」
「ちょ、待ち。今行くから。」
「じゃあ、先リビング行ってるよー」
「はーい」
ごく普通の、姉弟だったんだろう。昨日渡されたジャージ姿のまま、リビングへと降りる。
トーストを運んできたマスターが僕を見る。
「おはよう、こは……嘘でしょ?」
愕然とした顔で僕を見る。皿を落とさなかったのが不思議なくらいだ。
「なんで…戻ってるの?」
"琥珀"が戻ってきていることが気に入らないのだろうか?
「どうしたの、ねーちゃん。俺、なんかついてる?」
「違う。違う違う違う違う違う!」
取り乱し、くずおれるマスターを支えに駆けだしたとき、僕の視界を見慣れた青い前髪が流れるのに気づいた。
髪の毛の色は、戻るのか。
気を失ったマスターを、マスターのベッドへと運ぶ。
せめて、というのだろうか。僕ではなく、"琥珀"のためだけれど、マスターの作ってくれた朝ご飯を口にした。
美味しかった。多分、僕が昨日作ったものとは比べものにならないのだろう。
マスターは僕の中に"琥珀"を見ていて、でも僕にはマスターのための"琥珀"になることはできなくて…
僕はどうすればいいんだろう。
みんなは元気にやっているかな。マスターともうまくやっているかな。
皿を洗っていても、何していても、いろんなことを考えてしまう。思考をかき消すために歌いたくても、せいぜいデモソングしか入ってない。それに今歌ったら、倒れているマスターに迷惑だ。
昨日の朝のように、マスターの眠るベッドに腰掛ける。だけど、今はマスターの顔を見るのが辛い。
それでも、そばにいないのはもっと辛い。
めーちゃんやミク、リンレンに対しては、大切な姉妹、弟ではあるけれど、こんなにも、せめてそばにいたいと思ったことはなかった。それは、彼らがマスターのような苦しみを抱えた状態ではなかったから?マスターみたいに独りじゃなかったから?マスターが僕のマスターだから?
それとも…?
でも、だけど、マスター。
僕は僕ですが、"琥珀"にはなれなさそうですが、僕は僕として、もう少し、あなたのそばにいさせてください。
マスターの眠るベッドで、背中合わせに僕も横になった。
マスター、暖かい…
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糸魚川翡翠(プロフ) - 雪蛍@スプラトゥーン野郎さん» はい!!ありがとう本当嬉しいどうしよう嬉しすぎて頭がw (2015年10月18日 14時) (レス) id: 2a4e0f237c (このIDを非表示/違反報告)
雪蛍@スプラトゥーン野郎(プロフ) - commuのアイツです()こういうのマジで好きです。夜ぐらいに残りまとめて読ませていただきます()これからも頑張ってくださいね! (2015年10月18日 14時) (レス) id: 5b75cccc84 (このIDを非表示/違反報告)
糸魚川翡翠(プロフ) - ⊃ Hana.**⊂さん» 読んでくれて、続編も見てくださるなんて感激です! (2015年10月17日 20時) (レス) id: 2a4e0f237c (このIDを非表示/違反報告)
⊃ Hana.**⊂ - すごく 面白かったですっ !! 今から 続編を見にいこうかと 思いますっ !! (2015年10月17日 20時) (レス) id: e8e4c1d465 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:糸魚川翡翠 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hisui0327/
作成日時:2015年10月4日 15時