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“重岡さんって、何を専攻してるん?”
俺の言葉に、少しの間動きが止まった重岡さん。
聞いちゃいけないことやったかな、なんて今更後悔。
そして、ゆっくりと指から言葉が紡がれる。
“着いてきて”
俺は着いていく意思を込めて、重岡さんの手を握った。
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“楽器屋さん?”
“そうやで”
楽器。それは、俺とは縁の遠いもので。
楽器屋も生まれてから一度も入ったことなくて。
はたして耳の聞こえない俺みたいなのが入っていいものなのか、なんてマイナスな思考が働く。
入るのを躊躇ってしまった俺に、重岡さんは、少し心配そうな顔を向けた。
“ごめん、入りたない、?”
“んーん、初めてやから楽しみ”
そう言って、握っていた重岡さんの手を握ると、少し微笑んだ重岡さんに続いて、店に入る。
『いらっしゃいませ』
多分そう言った、金髪の男の人がニコニコしながらコチラに来た。めっちゃイカついのに、優しそうで。
笑った顔は少し重岡さんと似ていた。
重岡さんは、何だか親しげにその人と話していて。
羨ましい。
ちょっとづつ、自分に黒い感情が生まれているのが分かって。
自分のことなのに、なんだか怖い。
“こたき、かみちゃん”
この人が『かみちゃん』さん なのだと悟る。
ぺこっと頭を下げると、その人はニコニコしながら何かを書き始めて。
『こんにちは、こたきくん、俺はシゲの友達の神山智洋です。かみちゃんとか、呼んで?』
そこまで見ると、タイミング良く、手が差し出されたので、俺も手を出して、握手をした。
さっきまでこの人に、黒い感情を抱いていた自分が凄く恥ずかしい。
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雨(プロフ) - 両手を自分の前で交差するのは「こんばんは」だと思います!「こんにちは」は立てた人差し指と中指を額にあてて、時計の文字盤の12時の位置を表す手話をします! (2020年9月8日 22時) (レス) id: 40dd0f080c (このIDを非表示/違反報告)
なな(プロフ) - とても素敵な作品でした!続編行きます!! (2020年9月4日 13時) (レス) id: 15967c9fbf (このIDを非表示/違反報告)
ナツ(プロフ) - 初々しい二人がとっても可愛いです。続き楽しみにしてます! (2020年4月24日 23時) (レス) id: b2e91fce90 (このIDを非表示/違反報告)
みったん(プロフ) - ひぃなる。さん» ありがとうございます!今読ませていただきました。2人の初々しい様子を楽しませていただいております。これからも応援しております! (2020年4月7日 13時) (レス) id: 1a446cf6bc (このIDを非表示/違反報告)
みったん(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいております!9を公開し忘れているように思うのですが、これは間違いないでしょうか…?お手隙の際に公開していただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします! (2020年4月7日 1時) (レス) id: 1a446cf6bc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紗彩 x他1人 | 作成日時:2020年3月4日 16時