82.師匠 ページ33
.
マグナさんが消えて2日経った。
消息は依然として掴めていない。
町中の防犯カメラを確認したが、エナさんの店に寄った後の足取りは未だ不明のままだ。
フィスターさんは、マグナさんの失踪が近頃起こっている誘拐事件と関連があるとし、マグナさんを新しい被害者として捜査を進めている。
"俺の警察人生をかけて必ず見つけ出す。約束する"
芯のある強い眼孔で私を捉えながら、フィスターさんは誓うように呟いていった。
「何処にいるんですか.....！」
グッと奥歯を噛み締めながら呟きが漏れた瞬間、店のドアベルが鳴った。
「いらっしゃいませー」
見ない顔だった。
ドアの上に頭がつくほどの大きな人はこの店にはまず来ない。くたびれた外套に身を包み、深く被った帽子からは鼻から上が読み取れない。
その人物は他を見向きもせず、まっすぐカウンターに向かって歩いて来た。
「お一人様でよろしいですか？」
「いや、客じゃない。」
予想よりも若いその声に、すこし驚く。
だが問題は彼の言葉だ。
「ではなんの御用でしょうか？」
「マグナを、助ける気はあるか」
空気が変わる。
周りの雑音が一気に消えた。いや、そんな気がしただけか。
それ程にその言葉には、重みがあった。
なぜこの人がマグナさんを知っているのか。マグナさんは今危ない目に遭っているのか。なぜ私にそんな事を聞くのか。
疑問に思うことは山ほどあった。
だけど、
「あります」
表情の見えないその男の顔を真っ直ぐ見上げる。
人1人死んでも誰も気にしないこの世界で、私を見つけ、救ってくれたのは、マグナさんただ1人なのだ。
この世界で一番私を大切に思ってくれたのは、マグナさんなのだ。
数秒の沈黙の後、男は真一文字に結んでいた口元をニッと開き、
「今の言葉、しっかり覚えておけよ」
そして帽子のツバを親指で押し上げ、その顔を見せる。
「俺の名はカルロス。今日からお前の師範代となる男だ」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2435人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品が参加のイベント 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おじいちゃんパンチ - 天才よ帰ってこい (4月2日 14時) (
レス) @page39 id: 14d47f2dfd (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 久々に占ツクで面白い作品見つけました。更新待ってます。 (6月18日 19時) (レス) @page39 id: f494c8d92f (このIDを非表示/違反報告)
猫(プロフ) - 凄く面白かったです！！更新待ってます！ (2022年6月23日 14時) (レス) @page39 id: 846f3d2d4a (このIDを非表示/違反報告)
ねこ@自己満小説(プロフ) - 約2000人の人があなたの帰りを待ってます！それはもちろん僕も同じです！なので早く戻ってきてください。 (2021年11月28日 21時) (レス) @page39 id: d675a829f6 (このIDを非表示/違反報告)
キーさん(プロフ) - すごく面白かったので続きが見たいです!!!更新待ってます！ (2021年8月17日 8時) (レス) id: 1d2c287881 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みんくる | 作者ホームページ：http://nanos.jp/connector/
作成日時：2015年7月15日 19時
