72．葛藤と約束 ページ23
．
病室のドアが静かに閉まった。
結局あのあと三人とも、一言も話さず出て行った。
怒っているのだろうか。まあ、当たり前か。
でも、これは間違ってない。
この世界に来る前、ボドロさんが殺されたあと、消えたキルアだけを心配するゴンたちを見て、
大きな違和感を覚えたのだ。
キルアが操られている保証は何もないのに、皆一様にキルアが操られてボドロさんを殺したと信じている。そして、キルアが彼を殺したことを、誰も責めず、彼の死を悲しむことさえしない。
友達だから、操られていたから。それはそんな理由で許されることなのだろうか。
私はそれが許せなかった。正義の味方のような顔をして、結局は自分の、自分たちのことしか考えていないように思えた。
友達のためならそれでいいのか。本当にそれが、正義なのか？
そんな考えが頭をぐるぐる回っていたとき、扉をたたくノックの音が聞こえた。
「ボドロだ。」
「どうぞ」
大きな花束を抱えた彼は、試合会場で見たときよりも元気そうだった。
「身体の具合はどうだ？」
「とてもいいです」
「そうか・・・・。良かった。
今日は、君に私の命を救ってくれたお礼を言いに来た。・・・・有り難う。
君がいなければ、私はあそこで死んでいた」
「どういたしまして」
「意識が戻って、本当に良かった。君が死んでいたら、私は・・・・」
「いや！私が勝手にしたことですから、ボドロさんが気にとめる必要は無いです」
「いや、しかし」
「あーそれより！お花。ありがとうございます」
「っあぁ、これか」
「珍しいお花ですね。見たことがない」
「これは私の故郷に咲く花でね。昔からこの花のにおいに包まれて育ってきたものだから、花屋でもついこれを買ってしまうんだ。
こんな爺が花だなんて、可笑しいだろう」
「いえ、全然。素敵です」
「そうか、ありがとう」
ボドロさんは少し照れたように笑うと、花束をベッド横に置いた。
「そうだ。何か困ったときがあったらこの番号に電話してこう言ってくれ。
“麒麟は眠らない”
必ず君の助けになるはずだ」
「え、ありがとうございます」
ボドロさんがおもむろに懐から取り出した名刺を受け取る。
「そろそろ帰るとしよう。お大事に」
「さようなら」
そう言うとボドロさんは扉を開き、少し振り返って、
「君に助けたもらった命だ。めいいっぱい生きていこうと思う。
本当に有り難う。この借りは、いつか必ず返す。」
そしてもう二度と振り返ることはなかった。
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おじいちゃんパンチ - 天才よ帰ってこい (4月2日 14時) (
レス) @page39 id: 14d47f2dfd (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 久々に占ツクで面白い作品見つけました。更新待ってます。 (6月18日 19時) (レス) @page39 id: f494c8d92f (このIDを非表示/違反報告)
猫(プロフ) - 凄く面白かったです！！更新待ってます！ (2022年6月23日 14時) (レス) @page39 id: 846f3d2d4a (このIDを非表示/違反報告)
ねこ@自己満小説(プロフ) - 約2000人の人があなたの帰りを待ってます！それはもちろん僕も同じです！なので早く戻ってきてください。 (2021年11月28日 21時) (レス) @page39 id: d675a829f6 (このIDを非表示/違反報告)
キーさん(プロフ) - すごく面白かったので続きが見たいです!!!更新待ってます！ (2021年8月17日 8時) (レス) id: 1d2c287881 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：みんくる | 作者ホームページ：http://nanos.jp/connector/
作成日時：2015年7月15日 19時
