【男主】暗がり恋愛【ワンピ】 (ページ24)

今日:15 hit、昨日:2 hit、合計:14,048 hit

僕の居場所ページ24

あれから、どれくらいの時間が流れただろうか
僕は毎日ラムネを噛み砕き続けた。
どれだけ粉々に噛み砕いてもそんなことじゃ発散しきれないストレスが僕を包みどす黒い感情が常に僕の心を支配していた。
そんなある日、僕は本部の近くの町に出た。
その日は嵐で町には誰もいなかった。
僕はただ、このどす黒いものをこの激しい雨に打たせ流したかった。
だから傘もカッパも持たずに嵐の中僕は外を歩いた。
降る雨が体に打ち付けられ痛い。
だが体より心の方が痛い。

体温も下がり、手が氷の様に冷たくなったとき
懐の小電伝虫が呼ぶ。
思うように動かなくなった手で取り出し
応答すると、僕の一番聞きたくて一番聞きたくない声が聞こえた

スモーカー『おいAッ！！今どこにいやがる！！まさか外じゃねェだろうな！！？』

A「君には…関係ないだろう」

久しぶりの会話。
彼は何かに怒っているのか僕の言葉に耳を貸さない。

スモーカー『すぐに行くからそこを動くな！！』

A「え…」

返事をする前に電話は切られ、雨が地面に打ち付ける音だけが僕の鼓膜を揺らした。
スモーカーに言われたことを守る筋合いなんてないクセに、僕の体はその場所から一歩も動かなかった。

A「なんで今更僕はアイツの言うことを素直に聞くんだろ…」

独り言は誰にも届くことなく雨の音に掻き消された。
ただその場に突っ立っていると、遠くからパシャパシャと水溜まりの上を走る音が聞こえた。
だが残念ながら体温の低下が著しく
目も霞み、それが誰なのかハッキリと認識が出来ない。幻とも思えた。
その何者かはこちらに走って来ていて、ぼんやりしていたシルエットが鮮明になってくる。

スモーカー「Aッ！！」

彼はただ僕の名前を叫び、抱き締めた。
僕が低体温なせいで、彼の体が焼ける程ひどく熱く感じた。

スモーカー「心配させやがって！！」

A「なんで…」

スモーカー「お前の行きそうな場所くらいすぐわかるに決まってんだろ」

僕が聞きたかったのは、何故居場所がわかったのかではない。
それもあるが、それ以上に聞きたかったのは…

A「なんで今更僕を抱き締める…
君から突き放したじゃないか
もとはといえば全て君じゃないか
勝手が過ぎるんじゃないのか…？」

既に雨に濡れた僕の頬を生温かいものが伝う。
それに気付いたスモーカーが、それを指で拭いこう言った。

　

スモーカー「お前を幸せに出来るのはおれだけだ。お前の居場所はここだ」