【男主】暗がり恋愛【ワンピ】 (ページ12)

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打つ雨にページ12

僕は今日、一人で本部の外にある下町を歩いている。
何か用事とか、そんなんじゃないけど
まあパトロールも兼ねてお散歩をしている。
ブラブラとしばらく町を歩いていると、冷たいものが僕の鼻に触れた。
その辺りを触ると少し濡れていた。
上を見ると、空は曇りポツリと水滴が頬に落ちてきていた。

A「あ…雨だ」

段々と降る雨は強くなり、そのうち本降りになってきた。
町を歩く人は急いでどこかに走っていく。家に帰るか喫茶店にでも避難するのだろう。
僕も傘を持っていない。
…だが、なんとなく喫茶店に入りやり過ごす気にもなれない。
仕方なく建物の突き出た屋根に入り雨宿りをした。

A「うわぁ…これ止むかな」

雨は弱くなることを知らず、ザーザーと降り続ける。
…僕は雨があまり好きではない。

A「早く止まないかな…
さすがにずぶ濡れで帰るのはイヤだし」

はあ…今日はついてないなあ
全然雨も止まないし…生憎小電伝虫も持ってないから部下に迎えに来てもらうこともできない。
…なんだか寒いな
自分の体温が下がってきてる。手も冷たくなってきたのでポケットに手を突っ込む。

どれくらい経っただろうか。
町は傘を差す人がちらほらと見え始めた。
相変わらず僕は雨を屋根で凌ぎただ早く止んでくれと灰色い空を見詰めるばかり。
立つのも疲れたのでその場にしゃがみ込み、
懐からガラスの小瓶を出して白い玉をボリボリと噛み砕く。

A「……はぁ
仕事ほったらかしだ…まだ提出してない書類があるのにな…。
今何時かな…」

仕事を片付けなくては、とふらりと屋根を出た。
服は雨に打たれどんどん濡れていく。低くなっていた体温を更に雨水が奪う。
足は疲れろくに歩けず、ゆっくり足を出して本部に向かう。
過呼吸気味になり、足を滑らせ前に転びそうになった。
しかし、何かに体が支えられ、僕を打つものもなくなり温かいものに包まれた。

スモーカー「…なにしてやがる」

A「スモーカー…」

見上げると、葉巻を咥えたスモーカーが僕を胸に受け止め見下ろしていた。
手には大きな傘が一つ。

スモーカー「本部内を探してもどこにもいねェからまさかとは思ったが…」

A「んー…ちょっと散歩をね」

平気を装い笑ってそう言った。

スモーカー「元々悪い顔色が更に悪くなってる。さっさと帰るぞバカ野郎」

スモーカーはつけていた手袋をとり僕の手を握った。
大きく温かい手に僕は安心して、相合い傘のまま本部に帰った。