107話 ページ31
｢ピッチダウンを私ならどう攻略するか。そう聞きたいんでしょう？｣
さっきとは打って変わり、極めて真剣な面持ちで腕を組みながら言う私を一瞥した後、有人くんは顎に手を当て考え出した。
私の攻略の仕方より、まずは自分ならどう攻略するかを考えてるんでしょうね、とどこか他人事のように思いながらも、苦戦する両チームを見つめる。
鬼道｢攻めと守りを二つに分けて距離を取るか。だが、それでは一気に攻められた時、人数が足りず守りきれない｣
｢ねぇ、さっき葵ちゃんが言ってた言葉、聞こえてた？ぴょーんと飛び跳ねちゃえ。
やってみる価値、ありそうじゃないかしら。
てことで、後半戦で私が挑戦してみるわ。
それでいいわよね？｣
ポツリと零した有人くんの言葉を聞き逃さず、自分の考えたことを遠回しに言うと、少し不安そうにしながらも頷いてくれた。
まず私がやってみてできたらこの方法で行く。
でもその前にほかの攻略方法が見つかればそっちも試して見たらいいし。
まだまだ気が抜けないわね。
｢...そうだ。有人くん、後半じゃなく今交代いいかしら」
鬼道｢...選手交代！倉間に代わって中篠！｣
任せたぞ、と私の背をとん、と押した有人くんに不敵に笑ってみせると引きつった笑みを返された。
剣城｢な?!お前、水が怖いんじゃ...！｣
ピッチダウンして水面に落ちるのを見ててわかってるんじゃないのかと言いたげな顔をしている剣城くんに近付き、頬をつついた。
｢私に出来ないことなんてないでしょう？...あったわ、ごめんなさい｣
胸を張りそう言ったがすぐに出来ないことを見つけてしまい素直に謝ると剣城くんは目を点にして呆然としており、それを横目に自分のポジションへついた。
｢天馬くん、神童くん、積極的に私にボールを回して。
この方法でできるかどうか挑戦してみたいの｣
2人で目配せした後、私に目を向け頷いてくれ、それを笑顔で応え両頬を叩いて気合いを入れ直した。
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作者名：ひさめ | 作成日時：2018年7月5日 16時
