89話 ページ13
天城先輩が疲れて倒れてしまい、集まった剣城くん、西園くん、神童くんに続けなさい、と厳しく言うと、剣城くんたちが訝しげに私を見た。
そして日も暮れて来た頃、疲れきったように地べたに倒れるように寝そべる皆の顔を見渡す。
｢練習は以上よ。ではお疲れ様でした｣
吐き捨てるように冷たく言い放ち、有人くんと共に戻る。
｢これでいいのよね？｣
少し不安気に俯きながら言うと、有人くんはあぁ、と言い微笑んでくれ、それに安心して頬を緩ませる。
｢時には悪役になるのも大事だものね。...あ、これが俗に言う飴と鞭ってやつかしら｣
声を弾ませながら言っても、有人くんは何も反応してくれない。
結構無視されてるように見えるけれど、きっと心の中で返事してくれているのだろう、と勝手に解釈し、有人くんの腕にまとわりつくように近寄る。
鬼道｢時々、そーやって甘えにくるよな｣
つん、とそっぽを向くようにすると、有人くんは何でもない、と言って頭を撫でてきた。
それに応えるように目を細め、撫でられ飽きたら有人くんから少し距離を離し、またねと手を振り背を向けた。
その後すぐに春奈さんが有人くんに異議申し立てをしているのに気づきながらも、私は剣城くんの所へ向かった。
剣城くんの姿を見つけ、背後から近づくと気配に気づいたのか、ばっと身を翻して振り返り、私の姿を捉えるとほっと息をついた。
剣城｢どういうつもりだ｣
疲れきった剣城くんの顔を見つめていると、不意に剣城くんが口を開いたのに少しだけ驚き、すぐに笑みを浮かべさせた。
｢どういうつもりも何も、雷門が勝つためのことをしてるだけ｣
くるりと体を反転させ、剣城くんに背を向けると張り詰めた空気が私たちを覆う。
剣城｢俺たちを潰す気か｣
｢...賢い剣城くんならすぐに分かると思ったんだけれど、検討違いだったわね。もう一度言うわ。私は勝つためのことしかしていない｣
顔だけを剣城くんに向け、睨みつけるように見ると、剣城くんも睨み返すように私を見てきた。
それを振り切るかのように、顔を背け歩き出した。
後ろで何か言っていたのを無視して。
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作者名：ひさめ | 作成日時：2018年7月5日 16時
