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ベッドが二つと作業用の机と椅子が一つ。
シンプルな造りの部屋は、そういうことをするような宿ではないことに少しだけほっとしていた。




「先に入ってきたらどうだい。



女性は髪を乾かすのが大変だろ」




不意に女扱いされて胸が跳ねる。



「いつも面倒臭くてドライヤーもしてないって言ったら?」



「ちゃんと管理が行き届いた髪で何を言ってるんだ。



冗談言ってる暇があるなら早く行け」




降谷は冗談にかまってられないというように、面倒臭そうにタオルを投げてきた。
買ってきた酒とつまみを机上に並べる彼を横目に、シャワールームに足を入れる。



(もう、安室さんじゃないんだな)



濡れた髪を撫でながら、素で向き合うようになってきた男を思い返す。
前まではそれが少しだけ嫌だったと思う自分がいたにもかかわらず、今ではそれが嬉しいと変わっていた。




「もう、好きじゃん。私」




シャワーの音に隠すように独り言る。

検討するとはよく言ったものだ。
元々降谷のことは好きだった。
それを掘り返してまた同じ感情になるまでには、そう時間はかからなかった。

だからこそ、もう本当に付き合ってもいい、そんな感情になっていた。



(どうせポアロを離れて実家で働くようになったら、叶わなくなる恋だ)



そう諦め半分な感情もあり、降谷には悪い気もしてくる。



「次どーぞ」



「悪いな」



濡れた髪をタオルで拭きながら、Aと降谷はすれ違う。



(ほんとに何もしないんだ)



少しだけ期待していた自分もいた。
いつか水着姿を見た降谷は、自分の身体についてあれこれと言っていた。
それはそういう気があってからだと勝手に思っていたが、意外とそういったことには気が薄いのかもしれない。

のんびりと髪を乾かしていると、彼は気にせず上半身に洋服を身を纏わずに出てきた。



「まだ乾かし終わってなかったのか。やっぱり大変だな、髪が長いと」



「総代が上がるのが早いんだって」



一時は男社会に埋めてきた身だ。
別に上半身が裸であろうが、見慣れているはずだった。

しかし、好きな男の前では冷静にいられなかった。




「…もしかして、意識してくれてます?」




急に安室のような口ぶりで彼は楽しそうに言う。
ドライヤーの風量を上げて、




「目のやり場に困るから、早く着て」




文句を言えば




「来たけど?」




彼は近づいてドライヤーを奪う。
鏡越しに目が合って、思わず視線を逸らした。

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Nattu(プロフ) - 白雨さん» 白雨さん初めまして!キッドも二面性があるという点で何度かこの作品のキーマンになりつつ、青子ちゃんいるしなあ〜の気持ちでした!笑でも、書いてみたい欲はこの作品に出てくるくらいなのでチャレンジしたいと思います!大好き、ありがとうございます* (11月6日 16時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
白雨 - シリーズの最初の頃から毎日読ませて頂いてます。大好きです!((次回作について、怪盗キッド落ちを希望します! もちろんキッド様には青子ちゃんがいますが、この作品で何度か出ているキッド様が好きで…ご検討して下さったら嬉しいです!これからも応援しています! (11月5日 10時) (レス) @page19 id: f5a7983f74 (このIDを非表示/違反報告)
Nattu(プロフ) - かるぴんさん» かるぴんサンありがとうございます!私の作風(?)に合わせてヒロくんをリクエストをいただきありがとうございます;;作風まで言われることは滅多にないのでとても嬉しいです‼︎穏やかお兄さんヒロくんも迷いますね…検討させていただきます!ありがとうございます (10月20日 3時) (レス) id: 37a11942bb (このIDを非表示/違反報告)
Nattu(プロフ) - 紫苑さん» 紫苑サン、いつもありがとうございます!またリクありがとうございますー!赤井さん愛され〜クールだからこそ見てみたい感はありますね…ンン迷う…参考にさせていただきます‼︎ありがとうございます! (10月20日 3時) (レス) id: 37a11942bb (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 新たな展開にワクワクです。この小説が毎日の楽しみです!次回作を検討されているとのことですが、私は諸伏景光を希望します!Nattuさんの柔らかて温かい文章ととてもマッチすると思います!これからも応援してます!お体に気をつけて(*´-`) (10月20日 3時) (レス) @page1 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Nattu | 作成日時:2023年10月18日 16時

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