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「冗談ですよ…って言いたいとこなんですけど、
結構本気なんですよね」
笑った後、彼女はまっすぐな瞳でこちらを見ていた。
その視線から目を逸らすことができなかった。
もう駅前についているというのに、彼女は一向に降りようとしない。
降谷からの返事を聞かないと降りない。
そう丸い目は言っているような気がして、
「終電は何時だ?」
「まだ時間はありますけど、
私たまたま明日お休み貰ってるから、何時になってもいいですよ」
降谷の問いかけに、またAは宣戦布告で返す。
(何時になっても…)
時計を見て、思わず喉が鳴る。
降谷の中の男が想像するようなことを彼女はきっと言っていないはずなのに、ざわざわと胸が音を立てる。
(いや…まさか…な)
その賭けに乗るように、
「へえ…じゃあ、僕がこれから君とホテルに行くって言ったらどうする?」
試すような物言いで言葉を返す。
内心、緊張で溢れ、心臓の音が早かった。
Aの黒目が少し揺れた。
すると、すぐにけらけらと笑い始めて、
「ごめんっ、そんなすぐに乗ってくると思わなかった」
降谷の肩をぽんと叩く。
ただの無邪気な少女だった。
「ホテル行くのは全然いいんだけどさ…
…そういう目的だったら、お断り。
ただ総代とゆっくり話したい、それだけだよ。
信頼する総代だから、きちんと向き合いたいんだよね」
恥ずかしそうに言って、頬を掻く。
降谷が思っている以上に、Aは自分と向き合おうとしてくれていた。
それだけで胸がきゅっと締まる感覚があって、
「好きな酒はあるか?」
「気持ちよく酔えれば何でも」
ハンドルを切って、彼女の意思に身を委ねる。
「総代、明日仕事は?」
「あるよ。早朝出勤だ」
「へえー相変わらずお忙しいこと。
お酒なんて飲んでいいの?」
「問題ない。ノンアルコールにする」
「私だけ酔わせる気?」
少し不機嫌になったAに、
「まだ、僕の前で気が強そうな人間を演じている君の素面が見たいんでね」
片目を閉じれば、
「ほんとずるいよね、総代は」
Aは嬉しそうに、何を飲もうかなと声を上げていた。
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Nattu(プロフ) - 白雨さん» 白雨さん初めまして!キッドも二面性があるという点で何度かこの作品のキーマンになりつつ、青子ちゃんいるしなあ〜の気持ちでした!笑でも、書いてみたい欲はこの作品に出てくるくらいなのでチャレンジしたいと思います!大好き、ありがとうございます* (11月6日 16時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
白雨 - シリーズの最初の頃から毎日読ませて頂いてます。大好きです!((次回作について、怪盗キッド落ちを希望します! もちろんキッド様には青子ちゃんがいますが、この作品で何度か出ているキッド様が好きで…ご検討して下さったら嬉しいです!これからも応援しています! (11月5日 10時) (レス) @page19 id: f5a7983f74 (このIDを非表示/違反報告)
Nattu(プロフ) - かるぴんさん» かるぴんサンありがとうございます!私の作風(?)に合わせてヒロくんをリクエストをいただきありがとうございます;;作風まで言われることは滅多にないのでとても嬉しいです‼︎穏やかお兄さんヒロくんも迷いますね…検討させていただきます!ありがとうございます (10月20日 3時) (レス) id: 37a11942bb (このIDを非表示/違反報告)
Nattu(プロフ) - 紫苑さん» 紫苑サン、いつもありがとうございます!またリクありがとうございますー!赤井さん愛され〜クールだからこそ見てみたい感はありますね…ンン迷う…参考にさせていただきます‼︎ありがとうございます! (10月20日 3時) (レス) id: 37a11942bb (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 新たな展開にワクワクです。この小説が毎日の楽しみです!次回作を検討されているとのことですが、私は諸伏景光を希望します!Nattuさんの柔らかて温かい文章ととてもマッチすると思います!これからも応援してます!お体に気をつけて(*´-`) (10月20日 3時) (レス) @page1 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2023年10月18日 16時