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初めて降谷零の本質に触れられた。
そんな気がした。
必要最低限のものしか置かれていない部屋。
可愛らしい小さな獣が一匹。
まさか、こんなにも早く彼の自室に足を踏み入れられる、
「待っ」
彼に自分を求められると思っていなかった。
「この前僕を誘ってきた癖に、先に違う人に差し出すなんてマナー違反だろ」
そう言って、首つけられた痕を指でなぞられた。
Aの動きを感情的になって封じようとする彼に必死に抵抗する。
何度も掴まれる腕を振り払い、そのたびに彼の手首に噛みつくも彼は全く怯まなかった。
「だから、話を聞けって言ってるだろ!」
感情のブレーキが利かなくなった男につられて自分も感情的になる。
似た者同士だと思った。
「私の想像でしか、ない、けどさっ!
総代は、何か世界をひっくり返すような、諜報活動でもしてんじゃないのっ!?
だから、あのよくわかんない、外国人のお姉さんでてきてさっ」
諜報活動、その言葉を聞いて、一瞬だけ動きが止まったのをAは見逃さなかった。
それでも尚、彼は女の肢体を押さえつけようと何度も腕を掴もうとしてくる。
しまいには無理矢理唇を塞がれた。
初めてには、嫌なキスだった。
「答えてよっ零!!!」
一気に距離が縮まったのを利用して、綺麗な顔の額に思い切り頭突きした。
彼は我に返ったのか、茫然とAを見つめている。
その頬を容赦なく叩く。
自然と涙が零れていた。
「こんな形でキスなんてしたくなかった!
私だって元警官なの。組織を離れてもタブーがあることは分かってる。
総代がスパイしてようがなんだろうが、言わないし、言うつもりもない。
それを信じて貰えず、誤魔化すためにこうして押さえつけようとしてるんなら、
私はもう」
無理、そう言おうとして、一気に感情と共に涙が溢れて言葉にならなかった。
降谷だって立場はある。
それがあるからこそ黙っていたにも関わらず、それを壊そうとしている自分の行為は予測外かつ不都合なはずだ。
ここまで彼を責めてしまったことに胸が痛くなっていた。
すっと身体の力は抜け、ベッドの上に膝ががくりと落ちていく。
そんなAの身体をすぐに降谷は支え、
「君のことを信じられないようじゃあ、
僕は君の恋人にはならないほうがいいらしいな」
否定的な言葉を吐いて、苦しそうに笑った。
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Nattu(プロフ) - 白雨さん» 白雨さん初めまして!キッドも二面性があるという点で何度かこの作品のキーマンになりつつ、青子ちゃんいるしなあ〜の気持ちでした!笑でも、書いてみたい欲はこの作品に出てくるくらいなのでチャレンジしたいと思います!大好き、ありがとうございます* (11月6日 16時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
白雨 - シリーズの最初の頃から毎日読ませて頂いてます。大好きです!((次回作について、怪盗キッド落ちを希望します! もちろんキッド様には青子ちゃんがいますが、この作品で何度か出ているキッド様が好きで…ご検討して下さったら嬉しいです!これからも応援しています! (11月5日 10時) (レス) @page19 id: f5a7983f74 (このIDを非表示/違反報告)
Nattu(プロフ) - かるぴんさん» かるぴんサンありがとうございます!私の作風(?)に合わせてヒロくんをリクエストをいただきありがとうございます;;作風まで言われることは滅多にないのでとても嬉しいです‼︎穏やかお兄さんヒロくんも迷いますね…検討させていただきます!ありがとうございます (10月20日 3時) (レス) id: 37a11942bb (このIDを非表示/違反報告)
Nattu(プロフ) - 紫苑さん» 紫苑サン、いつもありがとうございます!またリクありがとうございますー!赤井さん愛され〜クールだからこそ見てみたい感はありますね…ンン迷う…参考にさせていただきます‼︎ありがとうございます! (10月20日 3時) (レス) id: 37a11942bb (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 新たな展開にワクワクです。この小説が毎日の楽しみです!次回作を検討されているとのことですが、私は諸伏景光を希望します!Nattuさんの柔らかて温かい文章ととてもマッチすると思います!これからも応援してます!お体に気をつけて(*´-`) (10月20日 3時) (レス) @page1 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2023年10月18日 16時