ひさしぶりとはじめまして 05【安室透/降谷零】

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職場にいながら思わず頭を抱えた。



(嫌な予感がすると思えば)



パソコンの画面に映るのは、とあるホテルを示す点。
周辺の監視カメラを覗けば、愛おしき女とバーボンとしての相棒である女が並んで歩く姿。
Aがベルモットのことを知らないということもあり、その変装はいつもより手が込んでおらず、組織の人間であればすぐに彼女だと分かるほどだ。

Aには悪いことをしているという自覚はある。
ただ車内でベルモットがAを気にする発言があって以降、いつか接触する日がくるのではないかと定期的にこうして位置情報を見ていた。

そして、今日動きがあったわけで。
暫く出てこない彼女達が不安になり、いてもたってもいられず、安室として顔を出す。
案の定Aは戸惑っていた。
その後ろで小さく布が擦れるような音がして、ベルモットが傍にいるのだろう、そう感じさせられた。



「貴方のガールフレンド、なかなかにいい女ね」



彼女と電話している最中に、その一文だけがメールで届いていた。

位置情報が移り変わり、Aがポアロにいることを示していた。
時計を見て、



(とっくの昔に閉店してるはずなのに)



そう気が付いて、慌てて車を走らせる。

ポアロの扉には鍵がかかっていて、中を覗いても誰もいない。
しかし、位置情報は変わらないままだ。
裏側に回って、店の裏口を覗き込めば




「A…？」




裏口の扉にもたれかかるようにして煙草を蒸かす女が一人。
その首筋には赤い痕がいくつか刻まれている。
彼女は安室に気が付いて、眉を下げた。
そして、ゆっくりと近づいてきて、ゆらゆらと身体を揺らす。




「…よかった。安室さんなら来てくれると思ってた」




吸っていた煙草の火を揉み消して、身体を預けるようにして倒れこんだ。
小さくその身体は震えていた。



「ここにきたってことは、



あの外国人の女の人のこと、何か知ってるんでしょ？」




彼女は全てお見通しだった。



「よく分からない人だったから、別れた後もつけてないか確認したけど大丈夫そう。


パーカーのポケットに盗聴器が入れられてたからホテルに置いてきたよ。


…安室さん…は、何者なの？」



そして、目の前で携帯電話を触り始めて、すぐに降谷の携帯電話が震える。



「念のために安室さんとして話すから。許して」



画面にそう映し出されて、彼女は涙を貯めながら言う。
どこまでも抜かりがない彼女に圧倒されるばかりで、戸惑っていた。


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