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「こんなに早く集まれるなんて」
「話が保留にならないうちにやった方が身のためでしょ。
A先輩、座って座って」
ポアロの帰り道。
不意に携帯電話が鳴って出てみれば、既に酔っ払った宮本だった。
その声は楽しそうで、甘えているようで。
会話にならないと悟ったのか、いつの間にかすぐ傍にいた佐藤が電話に代わっていた。
話を聞くに二人で飲んでいたが、その中でAの話題になったらしい。
宮本は近況を聞きたいと言い出し、佐藤が止めたものの言うことを聞かず今に至るということだった。
「すみません、急にお呼びたてして…ほらあ由美い」
「いえいえ。ちょうど明日シフト入ってなかったので、よかったです」
申し訳なさそうにする佐藤を尻目に元部下は酒を進めてくる。
思わず佐藤と顔を見合わせて苦笑した。
他愛もない話が続く。
Aの仕事のこと、最近見たテレビのこと。
彼女達は気を遣ってか、自分達の仕事については一切触れなかった。
「そう言えばあ、A先輩、あのポアロのイケメン君といい感じでしたよねえ」
「あっちょっ…」
「ポアロのイケメン…?ああ、安室さんね」
話を知らなかったはずの佐藤にも知られていく。
そして、小さく何度も頷いて口角を上げる。
「なるほど。だからあの時付き添いで来てたのね」
「あの時は偶然で…」
「へえ。偶然、ねえ。
あの時Aさんの状況を彼事細かに私に説明してくれたんですけどねえ」
彼女はキャンプの際の病院のことを言っている。
自分にとってもターニングポイントとなった時だ。
熱が昇っていくのを感じる。
酒のせいにしようと、缶をぐいと飲み干した。
もう一缶手を伸ばそうとするも、佐藤はそれを許さなかった。
「Aさんの話題になったから呼んだのにぃ。
主役がそう簡単に潰れて貰ったら来てもらった意味がないと思いますけど」
「んんん…美和子ちゃん、今は取り調べじゃないよ…そんな目で見ないでくださいよ…」
「美和子だけじゃないわよう。
私も今日色々聞く気で呼んだんですから」
突然、宮本に肩を組まれ歯を見せられる。
逃げ場がない。
肩を落としていた時、佐藤の携帯電話が鳴る。
画面には彼女の想い人の名前。
彼女は慌てて電話に出て、用件を言ってすぐに切った。
このタイミングしかないと思った。
「私は美和子ちゃんの話を聞きたくて来たんですけどね」
にやりと笑えば、佐藤はばつの悪そうな顔をした。
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Nattu(プロフ) - 紫苑さん» コメントありがとうございます!すごくすき…待つ…!嬉しい言葉が並んでいて元気になりますありがとうございますっっ;;仕事に精を出しつつ好きな文字書きに手を出せたらなあと思います*応援コメありがとうございます^^ (8月29日 3時) (レス) id: 37a11942bb (このIDを非表示/違反報告)
Nattu(プロフ) - Sanさん» うあぁあ!コメントありがとうございますとても嬉しいです;;仕事で疲れていたので嬉しい言葉ばかりで身に染みますありがとうございます;;;頭には書きたいことだらけなので文字にできるよう努めて行きます〜! (8月29日 3時) (レス) id: 37a11942bb (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - お仕事なら仕方ないです!主様のお話すごく好きです!いつも応援してます!楽しみに待ってますヾ(๑╹◡╹)ノ" (8月26日 8時) (レス) @page25 id: 0664a97245 (このIDを非表示/違反報告)
San(プロフ) - うあぁぁぉぉぉ!!最近から読まさせていただいているのですが、最高すぎて更新🆙をいつもいつも楽しみにしていました!お仕事は仕方ない、、応援してます❤️🔥💪楽しみにしてます!!! (8月26日 3時) (レス) @page25 id: c9bd71387a (このIDを非表示/違反報告)
Nattu(プロフ) - もなかさん» もなかさん初めまして!コメントありがとうございます!安室さんのことが好きな方に楽しんでいただけてとても嬉しいです;;ありがとうございます! (8月15日 0時) (レス) id: 37a11942bb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2023年8月1日 23時