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驚き、固まっている間に、彼は新しい酒を買い開けて手渡してきた。
流れるようにそれを受け取り、彼もまた新しい酒に口をつける。
「どうした?分かってたんだろ?」
急に目の前に現れた降谷に動揺が隠せない。
ずっと会いたい、答え合わせをしたいと待ち望んでいたはずだったのだ。
それなのに、そんな彼に怯えている自分がいた。
Aを見る降谷は、かつてのAが見ていた自信満々の笑みを浮かべていた。
「ドッペルゲンガーなんていないさ。
安室透は降谷零。
君の想像通りだ。
おめでとう、証明成功だ」
「な…んで、急にそんな態度、とるんですか」
自分から仕掛けたとはいえ、急に態度を翻した降谷が読めなかった。
もう正体が分かっているというのに、敬語が抜けない。
それほどに彼が得体のしれないものに見えていた。
「ずっと、私のことを馬鹿にしてたんですか」
だんだんと怒りへと変わっていく。
煙草を押し消し、座り直す。
「私が同期のAだと分かった上で、
どう接しようか迷ってる姿見て、総代はほくそ笑んでいたってことですか」
彼はAの変化に気が付いたようだ。
冷静な目つきが少しだけ緩くなる。
「また総代って言われる日が来るなんてね。
君がいなきゃ、言われないさ。
久しぶりだな、A」
そして、眉を下げて言った。
「だけど、僕だって立場がある。
そう簡単に身分を明かすわけにはいかない。
君が僕の知り合いだってことは会ってすぐに気がついたよ」
小さく頭を下げ、まっすぐAを見つめている。
「じゃあ。
なんで、今、話してくれたの。
総代なら、躱すことくらい余裕だったでしょ」
Aと総代。
そんな関係が蘇り、目の前の男にぶつかっていた。
一気に熱が昇り、倦怠感すら感じてしまう。
それほどに、彼が自分自身に作用していた。
「相変わらず君は痛い質問をするね」
「今、躱さないで。
答えてよ」
Aの言葉に、男は小さく唇を舐めた後、
「君が好きだ。
そんな単純な理由じゃだめかな」
視線を逸らすことなく、Aを見て言葉を吐いた。
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Nattu(プロフ) - 紫苑さん» コメントありがとうございます!すごくすき…待つ…!嬉しい言葉が並んでいて元気になりますありがとうございますっっ;;仕事に精を出しつつ好きな文字書きに手を出せたらなあと思います*応援コメありがとうございます^^ (8月29日 3時) (レス) id: 37a11942bb (このIDを非表示/違反報告)
Nattu(プロフ) - Sanさん» うあぁあ!コメントありがとうございますとても嬉しいです;;仕事で疲れていたので嬉しい言葉ばかりで身に染みますありがとうございます;;;頭には書きたいことだらけなので文字にできるよう努めて行きます〜! (8月29日 3時) (レス) id: 37a11942bb (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - お仕事なら仕方ないです!主様のお話すごく好きです!いつも応援してます!楽しみに待ってますヾ(๑╹◡╹)ノ" (8月26日 8時) (レス) @page25 id: 0664a97245 (このIDを非表示/違反報告)
San(プロフ) - うあぁぁぉぉぉ!!最近から読まさせていただいているのですが、最高すぎて更新🆙をいつもいつも楽しみにしていました!お仕事は仕方ない、、応援してます❤️🔥💪楽しみにしてます!!! (8月26日 3時) (レス) @page25 id: c9bd71387a (このIDを非表示/違反報告)
Nattu(プロフ) - もなかさん» もなかさん初めまして!コメントありがとうございます!安室さんのことが好きな方に楽しんでいただけてとても嬉しいです;;ありがとうございます! (8月15日 0時) (レス) id: 37a11942bb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2023年8月1日 23時