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扉を締め、走ってポアロに戻る。
(っ緊張した〜〜!!!!)
心臓の音は身体中を響くように煩く、燃え上がるほどに顔に熱が昇る。
結局、分かったことは予想通り安室と降谷は同一人物だということだけ。
自分から情報を投げて身を晒しただけだった。
風見の驚いた顔が焼き付いて離れない。
彼は降谷に何か作用してくれるだろうか。
そんなことを期待して自爆したにも近い。
「A姉ちゃん」
ポアロの扉を引いたところで、ちょうどよく家に戻ろうとするコナンに話しかけられた。
乱れた髪を直しながら笑みを浮かべる。
「風見さんとは話せた?」
また冷たい汗が落ちる。
少年は見透かしたように言った。
毛利家に居候しているせいか、この少年は妙に警察組織の人間との繋がりが多い。
もしかしたら、安室が降谷であることも承知の上で、風見に声をかけたのではないか。
そうとさえも思えてくるが、所詮は子供。
無邪気さ故かもしれない。
そう考えれば考えるほどに頭がぐるぐると思考回路が絡まり、目の前の少年が何者かさえも分からなくなってくる。
「…うん。話したよ。
じゃ、私は仕事に戻るから」
そう言い逃げして、物理的距離を図るつもりだった。
「高木刑事達を見て、羨ましいと思わないの?」
少年は当たり障りなく、鋭い刃を突き刺す。
(いいなって思ったことは何度もあるよ)
佐藤本人や宮本から聞く二人の関係性は誰もが憧れる理想形だ。
同じような立ち位置にいる安室とAでもできるのではないか。
そう乙女心に想像したこともある。
だが、過去という憑き物に縛られて上手く動けずにいるのだ。
「A姉ちゃんだってわかってるんでしょ。
安室さんがA姉ちゃんに見せる態度がもう違ってきていることくらい。
だったら…
もういいんじゃない?
僕達はそう思うよ」
コナンだけではない。
もう周りからそう思われてしまっている。
その現実が、自分を責め立てているような気がして苦しくなる。
(自分が臆病なだけなんだ、もうやめてよ)
目を背けたくなる事実に、純粋な目で見つめる少年を前に怒りをあらわにできない。
もどかしく、自分を締め付けて、
「…そうだね。
気を遣ってくれてありがとね」
自身でも分かるくらいに、ぎこちない笑みで返していた。
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Nattu(プロフ) - 紫苑さん» コメントありがとうございます!すごくすき…待つ…!嬉しい言葉が並んでいて元気になりますありがとうございますっっ;;仕事に精を出しつつ好きな文字書きに手を出せたらなあと思います*応援コメありがとうございます^^ (8月29日 3時) (レス) id: 37a11942bb (このIDを非表示/違反報告)
Nattu(プロフ) - Sanさん» うあぁあ!コメントありがとうございますとても嬉しいです;;仕事で疲れていたので嬉しい言葉ばかりで身に染みますありがとうございます;;;頭には書きたいことだらけなので文字にできるよう努めて行きます〜! (8月29日 3時) (レス) id: 37a11942bb (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - お仕事なら仕方ないです!主様のお話すごく好きです!いつも応援してます!楽しみに待ってますヾ(๑╹◡╹)ノ" (8月26日 8時) (レス) @page25 id: 0664a97245 (このIDを非表示/違反報告)
San(プロフ) - うあぁぁぉぉぉ!!最近から読まさせていただいているのですが、最高すぎて更新🆙をいつもいつも楽しみにしていました!お仕事は仕方ない、、応援してます❤️🔥💪楽しみにしてます!!! (8月26日 3時) (レス) @page25 id: c9bd71387a (このIDを非表示/違反報告)
Nattu(プロフ) - もなかさん» もなかさん初めまして!コメントありがとうございます!安室さんのことが好きな方に楽しんでいただけてとても嬉しいです;;ありがとうございます! (8月15日 0時) (レス) id: 37a11942bb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2023年8月1日 23時