79 ページ19
.
「彼女は僕と同期でね…
まあ…所謂想い人だった人だ」
上司はぽつりぽつりと想いを吐き始めた。
こうして自分の感情を素直に吐く降谷は初めてだった。
最初はただ、同期で偶然運命の再会を果たしてそのままというありきたりな流れだと思っていた。
しかし、そんな甘い予想はすぐに打ち砕かれた。
Aという女は、降谷が失ってきた大事な友人達と密接に関わっていたのだ。
さらにその中には彼女の元恋人だったという男も。
(かつての友人達を大切にしてきた降谷さんが、Aさんに興味を持たないわけがないか)
冷静に見えつつも、好奇心旺盛であることはこれまで一緒にいる中で風見がよく分かっていた。
「降谷君！」
話も終わりそうなタイミングで、上司は呼ばれどこかへ行ってしまった。
ちょうど時計を見れば仕事も半ばに差し掛かっていて、
(そういえば、今日は何も食べていなかったな…あっ)
ふとポアロのサンドイッチが恋しくなって、
(噂の彼女に会ってみたい)
降谷には黙って、愛車を走らせた。
近くに駐車し、少し緊張しながら扉を開けば、
「いらっしゃいませー！」
梓という店員が笑顔で出迎えてくれた。
彼女に言われるまま席に案内され、メニューを見ていると、
(あっ…いた)
カウンターの奥で珈琲豆を挽くAが見えた。
穏やかな雰囲気を持ち合わせながらも、きっちりとした返事とすんと伸びた背筋。
どこか同職であったことを感じさせられた。
サンドイッチとホットコーヒーを頼み、携帯電話を触る振りをしてAの方ばかり視線をやってしまう。
あの冷静沈着なエリート男をどうやって落としたのか、それほどの魅力がどんなもののなのか。
彼女に対して興味深々だった。
そんな時だ。
「あれ…？風見さん？」
扉が開いて隣に座ってきた眼鏡の少年はこちらに声をかけてきた。
直観的にまずいと思った時、
「コナン君いらっしゃい。この人とお知り合い？」
ちょうどよくサンドイッチを持ってきたAが声をかけてきて、
コナンはこちらを一瞥した後、
「うん！知り合いのお巡りさんなんだ！」
満面の笑みで言い、風見に悪戯っ子の顔を向ける。
コナンの発言にAの顔は曇る。
直接、降谷が安室だと話してはいないとはいえ、流石にもう気が付いているだろう。
勘が鋭いのなら、なおさら自分が降谷の関係者だと思われても仕方がない。
「どうも…」
味のしない珈琲を一口飲んだ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 312人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Nattu(プロフ) - 紫苑さん» コメントありがとうございます！すごくすき…待つ…！嬉しい言葉が並んでいて元気になりますありがとうございますっっ;;仕事に精を出しつつ好きな文字書きに手を出せたらなあと思います*応援コメありがとうございます^^ (8月29日 3時) (
レス) id: 37a11942bb (このIDを非表示/違反報告)
Nattu(プロフ) - Sanさん» うあぁあ！コメントありがとうございますとても嬉しいです;;仕事で疲れていたので嬉しい言葉ばかりで身に染みますありがとうございます;;;頭には書きたいことだらけなので文字にできるよう努めて行きます〜！ (8月29日 3時) (レス) id: 37a11942bb (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - お仕事なら仕方ないです！主様のお話すごく好きです！いつも応援してます！楽しみに待ってますヾ(๑╹◡╹)ﾉ" (8月26日 8時) (レス) @page25 id: 0664a97245 (このIDを非表示/違反報告)
San(プロフ) - うあぁぁぉぉぉ！！最近から読まさせていただいているのですが、最高すぎて更新🆙をいつもいつも楽しみにしていました！お仕事は仕方ない、、応援してます❤️🔥💪楽しみにしてます！！！ (8月26日 3時) (レス) @page25 id: c9bd71387a (このIDを非表示/違反報告)
Nattu(プロフ) - もなかさん» もなかさん初めまして！コメントありがとうございます！安室さんのことが好きな方に楽しんでいただけてとても嬉しいです;;ありがとうございます！ (8月15日 0時) (レス) id: 37a11942bb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Nattu | 作成日時：2023年8月1日 23時
