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長時間日に当たったせいか、頬が熱い。
いつの間にか日は暮れていて、帰りの車内で妹と姪は仲良く並んで眠ってしまっていた。
(あーあ。私、言いすぎちゃったかも)
きっと好意を伝えてきただろう彼に、同じように好意で返せるのはあの時しかないと思った。
ただ、すぐにその答え合わせをする余裕はなかった。
いくら勝ち確と何となくわかってはいても、臆病な自分がブレーキを掛けていた。
それも、安室と付き合いたいのか、降谷と付き合いたいのか、よく分からなくなっていたからだ。
きっと、どちらも彼で、どちらの彼もAは好きなのだ。
もし想いが通じ合ったところで、彼は自分の身分を明かすのだろうか。
変わらず安室としてAと接していくのだろうか。
そう思うと、初めて彼に恋心を抱いた降谷がいなくなってしまうようなそんな寂しさに陥ってしまう我儘な自分がいた。
「さっきのさ、彼氏?」
不意に運転している兄が声を掛けてきた。
驚いてその横顔を見ていると、
「お前が電話しに離れてる時、Aちゃんの好きな人が居たって言ってたからさ」
彼はこちらを見ることなく続けて行った。
もうこの歳にもなって家族に恋愛事情を知られている。
その状況に眩暈がしてしまいそうだった。
「いや、今の職場の同僚だよ。
たまたま出くわしてさ。
知り合いだからって話してる姿が恋人同士に見えたのかもしれないね」
そう言うと、ふーんと兄は興味がなさそうな声を上げた。
この状況を作った姪は、後ろで呑気に口を開けて眠ってしまっている。
「お前もそろそろ相手作ってもいい歳じゃん。
いんじゃないの、同僚でも」
「軽々しく言わないでよ。
本当にただの同僚なんだって」
ちょうどAくらいの歳に兄は結婚した。
それに姪と一緒に眠る妹も結婚を考えている恋人がいるのだと、つい最近母から伝え聞いたばかりだ。
それもあり、妹である自分を少しは心配していたのだろう。
Aの返事を聞いて、
「…それ、少し前に同じこと言ってた気がすんだけど。
お前が警察の時、ただの同僚だって見せてきた同期の野郎、
あいつ最終的に付き合ってたろ」
彼は口角を上げながら言う。
萩原と付き合っていたことは家族では母にしか言っていなかった。
きっとなかなか恋愛事情を語らない娘が話してくれたことが嬉しかったのだろう。
「もう…言わないでって言ったのに…」
思わず重い溜息が漏れた。
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Nattu(プロフ) - 紫苑さん» コメントありがとうございます!すごくすき…待つ…!嬉しい言葉が並んでいて元気になりますありがとうございますっっ;;仕事に精を出しつつ好きな文字書きに手を出せたらなあと思います*応援コメありがとうございます^^ (8月29日 3時) (レス) id: 37a11942bb (このIDを非表示/違反報告)
Nattu(プロフ) - Sanさん» うあぁあ!コメントありがとうございますとても嬉しいです;;仕事で疲れていたので嬉しい言葉ばかりで身に染みますありがとうございます;;;頭には書きたいことだらけなので文字にできるよう努めて行きます〜! (8月29日 3時) (レス) id: 37a11942bb (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - お仕事なら仕方ないです!主様のお話すごく好きです!いつも応援してます!楽しみに待ってますヾ(๑╹◡╹)ノ" (8月26日 8時) (レス) @page25 id: 0664a97245 (このIDを非表示/違反報告)
San(プロフ) - うあぁぁぉぉぉ!!最近から読まさせていただいているのですが、最高すぎて更新🆙をいつもいつも楽しみにしていました!お仕事は仕方ない、、応援してます❤️🔥💪楽しみにしてます!!! (8月26日 3時) (レス) @page25 id: c9bd71387a (このIDを非表示/違反報告)
Nattu(プロフ) - もなかさん» もなかさん初めまして!コメントありがとうございます!安室さんのことが好きな方に楽しんでいただけてとても嬉しいです;;ありがとうございます! (8月15日 0時) (レス) id: 37a11942bb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2023年8月1日 23時