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「A、泳がないのー?」
「私はいいかなあ。のんびりしてるよ〜」
「先に行っちゃうからねえ」
そう言って過ぎ去る妹の背中を見送った。
世の中は夏休み真っ盛り。
一年ぶりに来た地元のプールにも多くの家族連れが居た。
Aもその家族と同様で、
「Aちゃんも泳ごうよう!」
「あーもー分かった分かった!行くってば」
小さな姪っ子の手に引かれ、水の中に身を埋めた。
姪も気づけば幼稚園に入っていて、最近では好きな子ができたと楽しそうに話してくれた。
兄の子とはいえ、他人の子供だ。
長期休みのたびに会う少女は日に日に女性らしく、めまぐるしいスピードで成長していると感じる。
「Aちゃんは好きな人いないの!?」
にこにこと愛らしい笑顔を向けてくる少女に見せる顔がない。
つい顰めそうになったのを堪え、
「いないかなあ。姪っ子ちゃんみたいにいい人見つかるといいんだけどねえ」
「ぜったいいるよ!近くに!」
何気ない、近く、という言葉が胸に突き刺さる。
そうだといいね、そう言いながら笑うも、上手く笑えていた自信はない。
少しして笛の音が鳴る。
点検の時間らしく、姪っ子を連れ急いでプールから上がる。
そのタイミングで少女がお腹空いたと言い始め、兄の待つテントへと戻った。
「兄ちゃん、自分の子供預けてのんびりなんてずるいでしょ」
「俺、テント当番。立派な仕事してんの」
「はいはい、屁理屈ご馳走様〜」
姪を彼女の父親に預け、妹と出店へと向かう。
ちょうどお昼時だ。
同じように食事を取ろうと並ぶ人が多く、行列ができていた。
仕方ない、と二人で手分けして並び始める。
手持無沙汰になり触る携帯電話が震え、慌てて電話に出る。
「Aさん!今プールにいますよね!?」
「え?」
蘭の声に驚き辺りを見回すと、すぐ近くで手を振る若い女の子が三人。
それと行列の隙間を掻い潜ってこちらに手を振る少年少女。
(家族で居る時に知り合いと会うなんて気まず…)
なんて思っていると、
「あれ?Aさん?」
隣の列から知っている声とともに、金髪の彼がひょっこりと顔を出した。
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Nattu(プロフ) - 紫苑さん» コメントありがとうございます!すごくすき…待つ…!嬉しい言葉が並んでいて元気になりますありがとうございますっっ;;仕事に精を出しつつ好きな文字書きに手を出せたらなあと思います*応援コメありがとうございます^^ (8月29日 3時) (レス) id: 37a11942bb (このIDを非表示/違反報告)
Nattu(プロフ) - Sanさん» うあぁあ!コメントありがとうございますとても嬉しいです;;仕事で疲れていたので嬉しい言葉ばかりで身に染みますありがとうございます;;;頭には書きたいことだらけなので文字にできるよう努めて行きます〜! (8月29日 3時) (レス) id: 37a11942bb (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - お仕事なら仕方ないです!主様のお話すごく好きです!いつも応援してます!楽しみに待ってますヾ(๑╹◡╹)ノ" (8月26日 8時) (レス) @page25 id: 0664a97245 (このIDを非表示/違反報告)
San(プロフ) - うあぁぁぉぉぉ!!最近から読まさせていただいているのですが、最高すぎて更新🆙をいつもいつも楽しみにしていました!お仕事は仕方ない、、応援してます❤️🔥💪楽しみにしてます!!! (8月26日 3時) (レス) @page25 id: c9bd71387a (このIDを非表示/違反報告)
Nattu(プロフ) - もなかさん» もなかさん初めまして!コメントありがとうございます!安室さんのことが好きな方に楽しんでいただけてとても嬉しいです;;ありがとうございます! (8月15日 0時) (レス) id: 37a11942bb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2023年8月1日 23時