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警察学校時代の彼女は偽善者で、ただ良い奴ぶりたいなのだろう、そう少しだけ嫉妬していた。
本当はそうではないことくらい、自分がよく分かっていた。
「じゃ、少しだけ離れるから安室さんお願いしますね!」
慌ただしく出て行ったAの背中を見ながら、彼女の献身的な心に触れる。
蘭に頼まれたから嫌々。
そんな態度は一切見せず、むしろ嬉々としているようにも見える。
少年団探偵団とキャンプに行った時もそうだった。
子供達に囲まれながら料理をする彼女は生き生きしていた。
時々見てしまう、彼女のカメラから取り込んだAの写真を見ればそれを目の前にいるように感じられて。
(どうして君はそうやって誰にでも優しくできるんだい)
そして、また嫉妬する。
惹かれる。
「ただいま戻りました。店番ありがとうございました!」
「いえ。コナン君大丈夫でしたか?」
「はい!ご飯しっかり食べてくれましたし、
たくさん寝たら治るでしょう!」
そう言って満面な笑みで空っぽの鍋を見せつけてきた。
コナンが美味しかったと言っていたと、彼女は嬉しそうに言う。
自分が作ったわけでもないのに。
「Aさん」
今から洗い物に取り掛かろうとする彼女の名前を呼ぶ。
不意に呼ばれ、女は不思議そうにこちらを見た。
「僕は、君が羨ましい」
何のことだ、そう丸い瞳は言っている。
「この前のキャンプの時から思ってたんです。
僕や梓さんに話す時、コナン君達と話す時。
大人だから、子どもだからって態度を変えず、誰にでも優しい。
僕なら…つい贔屓してしまいます」
褒めたつもりだった。
でも、どこか生意気な自分がいて、皮肉交じりな言葉を吐いてしまう。
それに、彼女は
「…私は優しくしたくて、好かれたくてしてるわけじゃないので、
勝手にそう思われるのはちょっと…」
怪訝そうな顔をして視線を逸らした。
(違う。そう言いたかったわけじゃないのに)
プライド高い自分が邪魔をする。
素直に自分の言葉を吐く萩原が頭にちらつき、苛立たせる。
そんな時だった。
「…優しいって言ってくれたのは嬉しいです。
でも、私は、
何でもできる、安室、さんに憧れてますよ」
Aは予想外の言葉を吐いた。
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Nattu(プロフ) - 紫苑さん» コメントありがとうございます!すごくすき…待つ…!嬉しい言葉が並んでいて元気になりますありがとうございますっっ;;仕事に精を出しつつ好きな文字書きに手を出せたらなあと思います*応援コメありがとうございます^^ (8月29日 3時) (レス) id: 37a11942bb (このIDを非表示/違反報告)
Nattu(プロフ) - Sanさん» うあぁあ!コメントありがとうございますとても嬉しいです;;仕事で疲れていたので嬉しい言葉ばかりで身に染みますありがとうございます;;;頭には書きたいことだらけなので文字にできるよう努めて行きます〜! (8月29日 3時) (レス) id: 37a11942bb (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - お仕事なら仕方ないです!主様のお話すごく好きです!いつも応援してます!楽しみに待ってますヾ(๑╹◡╹)ノ" (8月26日 8時) (レス) @page25 id: 0664a97245 (このIDを非表示/違反報告)
San(プロフ) - うあぁぁぉぉぉ!!最近から読まさせていただいているのですが、最高すぎて更新🆙をいつもいつも楽しみにしていました!お仕事は仕方ない、、応援してます❤️🔥💪楽しみにしてます!!! (8月26日 3時) (レス) @page25 id: c9bd71387a (このIDを非表示/違反報告)
Nattu(プロフ) - もなかさん» もなかさん初めまして!コメントありがとうございます!安室さんのことが好きな方に楽しんでいただけてとても嬉しいです;;ありがとうございます! (8月15日 0時) (レス) id: 37a11942bb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2023年8月1日 23時