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我ながらしつこい男だと思う。
それに、好意を押し付けているだけの面倒な奴だとも思う。
でもそこまでして、Aと繋がっていたいと思うのは萩原の影がちらつくからかもしれない。
「安室さん、私のこと、子供か自分のものか何かと思ってません?
管理されるの嫌なんですけど」
どうやらその言葉に嘘はなさそうで、彼女は嫌そうな声で文句を吐いた。
奥から改札を通る音が聞こえる。
「私、苦手な人が三つあります。
一つ目が偉そうに上から目線の人。
二つ目が横からずけずけと話に入ってくる人。
三つ目が相手の状況お構いなしに関わってくる人です」
「へえ。それは迷惑な人ですね」
自分のことだと分かりつつも白々しく返事をすれば、ぼそぼそと返事が返ってくる。
どうやらAは静かなところに移動したようだ。
同じ間隔で信号機の音が少し離れた場所から聞こえる。
彼女は諦めたように大きく溜息を一つついた。
「合コンのはどうだったんですか」
「どう…っても楽しかったですよ」
「気になる方は見つかりました?」
「別に…私は誘われてきただけで。
それに、今のところ恋愛はする気なくて」
その言葉に胸が少しだけ締め付けられる。
自分のチャンスが奪われているような気がした。
少し間を置いて、彼女は自分から言葉を少しずつ吐き始めた。
「梓さんから聞いたと思うんですけど、私の元恋人は警察官です。
それに警察官は私にとっても好きな仕事でもあったんです。
…正直、それを両方失った状態の今の私は、恋愛のモチベーションに対してはそこまでなんですよ」
あれから気になって墓地の管理人にAの写真を見せた。
すると、命日どころか盆、年末年始など大事な節目に必ず訪れているのだという。
いくらAの退職が理由で別れたとはいえ、彼女にとっては苦渋の決断だったのではないだろうか。
それに、別れて会うことがなくなったとはいえ、元恋人が殉職という知らせを聞いて胸を痛まないはずがない。
(確かに警察学校時代には僕に勝機があった。
だけど、今の段階で萩原よりも…否、萩原と同じくらいの立ち位置に居られるのかな)
唐突に不安に襲われて、
「それも…そうですよね。
まあ大勢でお酒飲んだり喋ったりするのも楽しいですからね」
と返事にもなっていない言葉を吐いていた。
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Nattu(プロフ) - かるぴんさん» わーー!かるぴんさんんん!;;私の厚かましいお願いに応えていただきありがとうございます;;;とっても嬉しいです;;だいぶ回復してきたので再開いたします〜作品を好きでいてくれるかるぴんさんのお声もあって続けることができてます…!いつもありがとうございます!! (8月1日 23時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - Nattuさん!体調が芳しく無いのですね( ; ; )1日でも早く元気になりますように( ; ; )この作品が大好きです!(*´꒳`*) (7月28日 2時) (レス) @page26 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
Nattu(プロフ) - かるぴんさん» コメントありがとうございます!気づくの遅くなってしまい申し訳ございません…!沢山嬉しい言葉があって励みになります。にこにこしながらコメント見させていただきました^^笑ゆっくりではありますが温かく見守っていただけると幸いです。いつもありがとうございます! (7月28日 1時) (レス) id: 37a11942bb (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 初めまして今までたくさん夢小説を読んできましたが、こんなに心が動かされたのは初めてです!甘すぎない雰囲気が大好きです!これからも2人がどうなるのか陰ながら見守らせていただきます!! (7月5日 0時) (レス) @page2 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2023年7月4日 0時