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待ち合わせ場所に行くと、
「すみません!お待たせしました!
私から誘っといて!」
「全然〜。こっちこそ誘ってくれてありがとう」
すでにAは待っていた。
半袖のシャツに細見のスラックス。
爪にはうっすらとベージュのネイルが施されている。
「なんだか…Aさん、違って見えますね」
「何よその言い方。
由美ちゃんと会ってたのって仕事の時かその帰り道じゃない。
休みの日くらいちゃんとするよ」
そう言って眉間に皺を寄せた。
(よかった、変わらないままだ)
しっかり者で凛々しく見える彼女は、気を許した人には少しだけ幼い顔を見せる。
その表情が由美は好きだった。
早速会場に着くと、Aは緊張した面持ちを見せた。
相手にばれない程度に観察するような目で見ている。
「Aさんはカフェ店員してるんだ。
行ってみたいな」
「ぜひ。珈琲だけじゃなくサンドイッチも美味しいのでお勧めですよ」
相手の男はAに興味があるというのに、彼女は店について話している。
どこまで仕事馬鹿というべきか。
その姿も一緒に仕事をしていた時と同じで。
「ごめん、由美ちゃん。電話出るからちょっと外行くね」
そう言ってばたばたと彼女は出て行ってしまった。
ちょうど目の前の酒もなくなっている。
自分と周りの分を頼んでお手洗いに向かえば、そこにAはいた。
小さく会釈して、個室に入る。
「ええ。今友達と飲みに来てて…」
扉越しにAの声が聞こえてくる。
話しぶりからするに、電話の相手は特別仲の良い人物と言う訳ではなさそうだ。
「なんだ、聞いてたんですか。
そうですよ、合コンです合コン。
悪いですか」
だんだんと不機嫌な口調になる。
大きく溜息をついて矢継ぎ早に言う。
「大体関係ないじゃないですか、私の恋愛のことなんて。
とにかく明日仕込みを早めにしたほうがいいってことでしょう。
もう私の話は放っておいてくださいよ」
出ようにも出られない。
そう困っていると、
「…私の子供か何かと思ってるでしょ。
ちゃんと気を付けますから。
お節介、誠に感謝いたします!」
彼女は声を上げ勢いよく電話を切った。
扉を開け出てみると、Aの頬は緩んでいて、
「あ、由美ちゃんごめんね。
煩かったよね」
嬉しそうな顔のまま由美に話しかけてきた。
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Nattu(プロフ) - かるぴんさん» わーー!かるぴんさんんん!;;私の厚かましいお願いに応えていただきありがとうございます;;;とっても嬉しいです;;だいぶ回復してきたので再開いたします〜作品を好きでいてくれるかるぴんさんのお声もあって続けることができてます…!いつもありがとうございます!! (8月1日 23時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - Nattuさん!体調が芳しく無いのですね( ; ; )1日でも早く元気になりますように( ; ; )この作品が大好きです!(*´꒳`*) (7月28日 2時) (レス) @page26 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
Nattu(プロフ) - かるぴんさん» コメントありがとうございます!気づくの遅くなってしまい申し訳ございません…!沢山嬉しい言葉があって励みになります。にこにこしながらコメント見させていただきました^^笑ゆっくりではありますが温かく見守っていただけると幸いです。いつもありがとうございます! (7月28日 1時) (レス) id: 37a11942bb (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 初めまして今までたくさん夢小説を読んできましたが、こんなに心が動かされたのは初めてです!甘すぎない雰囲気が大好きです!これからも2人がどうなるのか陰ながら見守らせていただきます!! (7月5日 0時) (レス) @page2 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2023年7月4日 0時