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(なるほど、そういうことだったのか)
車内に戻り、携帯電話の画面をなぞる。
その画面には数年前の轢き逃げ事件。
そこには、警察官一人が重症を負ったと記載があった。
扉越しに彼女達の会話を盗み聞いた。
事件当時、いち早く異変に気が付いたAは当時の部下である宮本を歩道へと突き飛ばした。
それにより彼女の安全は守られたものの、Aは違った。
『由美ちゃんは処理に集中して』
宮本が言うに、その当時のAはそう言い捜査を任せ、そのまま病院へ。
怪我は治ったものの、そのまま警察官としての道を絶ってしまったのだという。
それを元部下は責任を感じていたのだった。
「由美ちゃんは悪くない。
憎むべきなのはあの時の被疑者なのであって、今はもう法で裁かれてるんだから。
お願いだからそんな顔しないで」
いつも凛とした佇まいの彼女が瞳を潤ませながら言っている姿に、安室の心も締め付けられるような気がした。
その場に居られなくなって、愛車へと逃げた。
「萩原…すまなかったな」
彼女に影響されるようにして買った煙草を見つめた。
ふと五人で飲み会をした時のことを思い出す。
あの時の自分はすっかりAのことなんて忘れてしまっていた。
勿論警察学校時代に自分が想いを寄せていたことも。
しかし、萩原はそうではなかったに違いない。
いくらAと結ばれていたとしても、過去には恋敵だったわけなのだから。
そんな相手が自分の恋人をあまり良い風に言っていなかったら。
『ありゃあ…あんまりよくなかったぜ』
帰り道に言われた伊達の言葉が蘇る。
あの時はあまり意味がよく分かっていなかった。
酔った頭で伊達が何か言っているのだろう、それくらいにしか思っていなかった。
伊達だけではない。
自分以外の人間は萩原の異変に気がついていたのかもしれない。
今考えれば、萩原と降谷とでフォローをしようと彼らの間で帰路を二手に分かれたのだ。
(お前が居ない今の世界で…萩原が許してくれるなら、
今度は僕がAを支えるよ)
誘われるように煙草を口に咥える。
慣れない美味しくもない味が口に広がる。
それでも口から外すことを辞めず、煙を吐いた。
(…君達の思い出の品は僕には合わないみたいだ)
すぐに火を消して、愛車を走らせた。
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Nattu(プロフ) - かるぴんさん» わーー!かるぴんさんんん!;;私の厚かましいお願いに応えていただきありがとうございます;;;とっても嬉しいです;;だいぶ回復してきたので再開いたします〜作品を好きでいてくれるかるぴんさんのお声もあって続けることができてます…!いつもありがとうございます!! (8月1日 23時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - Nattuさん!体調が芳しく無いのですね( ; ; )1日でも早く元気になりますように( ; ; )この作品が大好きです!(*´꒳`*) (7月28日 2時) (レス) @page26 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
Nattu(プロフ) - かるぴんさん» コメントありがとうございます!気づくの遅くなってしまい申し訳ございません…!沢山嬉しい言葉があって励みになります。にこにこしながらコメント見させていただきました^^笑ゆっくりではありますが温かく見守っていただけると幸いです。いつもありがとうございます! (7月28日 1時) (レス) id: 37a11942bb (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 初めまして今までたくさん夢小説を読んできましたが、こんなに心が動かされたのは初めてです!甘すぎない雰囲気が大好きです!これからも2人がどうなるのか陰ながら見守らせていただきます!! (7月5日 0時) (レス) @page2 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2023年7月4日 0時