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久しぶりに大きな病院を訪れた。
佐藤は同僚達とのやり取りがあるのか、部屋に一人取り残されてしまう。
(萩原君。また私、悪運引いちゃったかもしれない)
携帯電話を開き、画像フォルダの奥の方に眠った写真を指先でなぞる。
彼と別れて以降、写真を見たのは初めてだ。
否、見ないようにしていたといったほうが正しいかもしれない。
Aを後ろから羽交い絞めするようにして笑った萩原の顔に思わず涙が滲む。
(別れるとは言ったけど…いなくなるなんて聞いてなかったな)
「Aさん、大丈夫かい」
ノックと共に現れた萩原と仲が良かった彼。
急いで携帯電話をしまい込み、向き合う。
「さっき治療が終わりました。
治るまでは時間がかかりそうですが頑張ります」
「そうですか。それならよかった」
安室は流れるようにAの前に座った。
優しい瞳がまた涙を誘う。
「Aさん、帰り私が送りますよ」
不意に扉が開いて佐藤が声を掛けてきた。
心のどこかでほっとする自分がいた。
今、長い時間二人きりにさせられていたら、どうしていいか分からない。
それどころか彼の前で泣いてしまいそうだ。
「安室さんもお付き合いいただきありがとうございました」
「いえ。後はよろしくお願いします。
じゃあ、Aさん、またポアロで」
安室はにこやかに笑いその場をすぐさま立ち去った。
それと入れ替わるようにして、
「A先輩!」
「由美ちゃん?!」
かつての後輩が入ってくる。
突然のことに驚いていると、佐藤は申し訳なさそうな顔をして、
「すみません。由美が会いに行くって聞かなくて」
宮本を無理矢理Aから引き剥がす。
元部下の目は赤く充血していた。
「美和子から聞きました。
怪我してるのに無理してるって。
…あの時と同じじゃないですよ。
どうして今も弱いところ見せてくれないんですか」
今よりも少し若い宮本の顔がフラッシュバックして、無意識のうちに涙が頬を伝っていた。
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Nattu(プロフ) - かるぴんさん» わーー!かるぴんさんんん!;;私の厚かましいお願いに応えていただきありがとうございます;;;とっても嬉しいです;;だいぶ回復してきたので再開いたします〜作品を好きでいてくれるかるぴんさんのお声もあって続けることができてます…!いつもありがとうございます!! (8月1日 23時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - Nattuさん!体調が芳しく無いのですね( ; ; )1日でも早く元気になりますように( ; ; )この作品が大好きです!(*´꒳`*) (7月28日 2時) (レス) @page26 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
Nattu(プロフ) - かるぴんさん» コメントありがとうございます!気づくの遅くなってしまい申し訳ございません…!沢山嬉しい言葉があって励みになります。にこにこしながらコメント見させていただきました^^笑ゆっくりではありますが温かく見守っていただけると幸いです。いつもありがとうございます! (7月28日 1時) (レス) id: 37a11942bb (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 初めまして今までたくさん夢小説を読んできましたが、こんなに心が動かされたのは初めてです!甘すぎない雰囲気が大好きです!これからも2人がどうなるのか陰ながら見守らせていただきます!! (7月5日 0時) (レス) @page2 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2023年7月4日 0時