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しかし、そんな幸せな日々はずっと続くわけでなかった。
「ごめん…私達、別れよう」
突然、連絡を寄越さずやってきたAは苦しそうにそう言った。
これまでなく辛そうで、哀しい顔をしていた。
Aが轢かれたと話を聞いた時、気が気でなかった。
だが、別部署で勤務する萩原はすぐに駆けつけることもできず、何よりAが来ることを拒んでいた。
『うん。なんとか生きてるよ。
大丈夫大丈夫。
今度着替え持ってきてくれたら助かるな。
その時、話せるの楽しみにしてるね』
そう電話で話を聞き、暫くして彼女のいる病室を訪れた時、
「来てくれたんだ。ありがとう。…嬉し」
彼女は自分の前で涙を零した。
本心は来なくていいというわけではなかった。
萩原に迷惑をかけたくない、心配させたくない、そういった感情で断っていたのだと気づく。
自分より一回り小さいAの身体を抱き締めれば、細い腕が萩原に絡みついた。
その手は震えていて、
「素直になっちゃえば楽なのに」
そう言えば、
「…自分でもそう思う。
でも、少し不器用みたい」
きゅうと萩原の服を小さく握った。
Aはあまり周りに交際相手がいることを言わなかった。
それは萩原も同様だった。
職場内恋愛でもあり、同期だったから、そういった理由もあるが、互いに話す必要性が来たらでいい、そんな淡泊な考えを持っていたからかもしれない。
松田達とたまに会うことがあったが、彼らからこっちにそういった話がない限り話すことはなかった。
むしろ、興味がない奴らばかりだったというのもあるだろうか。
こうして誰にも話すことないまま、Aは退院していた。
そこから
「一緒に暮らそうか」
同棲するまでのスピードは速かった。
何よりも萩原がAのことが心配だったのだ。
その提案に彼女はすぐに了承した。
きっと彼女自身も不安で、萩原に頼ることを覚えたのかもしれない。
その感情の変化がとても幸せだった。
そうして、Aが萩原の家に転がり込んでくる予定だった。
が、現実はそうはうまくいかず、
「私…仕事を辞めることにした。
だから、もう萩原君とは付き合えない」
彼女はそう残酷なことを言い放った。
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Nattu(プロフ) - かるぴんさん» わーー!かるぴんさんんん!;;私の厚かましいお願いに応えていただきありがとうございます;;;とっても嬉しいです;;だいぶ回復してきたので再開いたします〜作品を好きでいてくれるかるぴんさんのお声もあって続けることができてます…!いつもありがとうございます!! (8月1日 23時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - Nattuさん!体調が芳しく無いのですね( ; ; )1日でも早く元気になりますように( ; ; )この作品が大好きです!(*´꒳`*) (7月28日 2時) (レス) @page26 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
Nattu(プロフ) - かるぴんさん» コメントありがとうございます!気づくの遅くなってしまい申し訳ございません…!沢山嬉しい言葉があって励みになります。にこにこしながらコメント見させていただきました^^笑ゆっくりではありますが温かく見守っていただけると幸いです。いつもありがとうございます! (7月28日 1時) (レス) id: 37a11942bb (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 初めまして今までたくさん夢小説を読んできましたが、こんなに心が動かされたのは初めてです!甘すぎない雰囲気が大好きです!これからも2人がどうなるのか陰ながら見守らせていただきます!! (7月5日 0時) (レス) @page2 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2023年7月4日 0時