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寝てもいい、そう言ったのにAの瞳は開いたままだった。
ミラー越しに見た彼女はぼうっと天井を見つめていて



「まだ痛みますか?」



「…ちょっと」




そう言ってAは足を撫でた。

そしてまた沈黙が流れる。
正直空気が重い。
そう思っていると、



「由美ちゃんに聞いたけど、美和子ちゃん、高木さんと付き合ってるんだって?」




突然彼女は自分の内情に触れてきた。
ついハンドルを握る手が離れてしまいそうになる。
後方を気にしつつ、運転に集中した。




「仲良しで羨ましいなあ」




Aはそう言い、にやりと笑みを浮かべた。
少しだけ他人行儀な彼女の面影は消えている。
一度食事をしたあの時のAだ。

その数年後、由美からAの退職の話。
親友からは具体的な理由を聞かされず、渋い顔をしていた。
自分と同じように刑事を目指していた彼女が自ら辞めるという選択肢を選ぶということに疑問に感じていた。

聞くのは今しかないと思った。




「Aさんもあの時同僚とお付き合いされてましたよね?



あの人とはどうなった…




いや、不躾な質問ですけど…どうしてこの仕事をお辞めになられたんですか」





Aの顔が歪んだ。
一度佐藤を見た後、また天井に視線を戻す。
大きく一息ついた後、




「私、一度車に轢かれたんですよ。被疑者の車に」




おもむろにTシャツの裾を胸まで捲り挙げた。
背中から腰にかけて大きな痣が広がっている。



「職質してたら、その人の車から薬が出てきて。


私は後ろのトランクボックスを見てて、由美ちゃんはその犯人の傍で立ち塞がるように見てたかな。


きっと彼はしっかり隠したつもりだったんだろうけど、私に見つかってしまって慌てたんだろうね。


由美ちゃんを蹴って車に乗った後、そのまま勢いよく後ろに…ね」




後は想像したらわかるかな、と彼女は寂しそうに言った。
由美が頑なに言わなかったのに納得がいったのと、あまりに惨いことだと思い話だけ聞いた佐藤でさえも胸が苦しくなった。




「怪我は治ったし復帰しようとしたんだけど、


今なら被害者の気持ちがよく分かる。フラッシュバックしちゃうんだよ、あの時が。


だから、そんな良くない精神状態で仕事を続けてたら…身体壊しちゃった」




そう言って彼女は腕を目の上に置いて、




「ごめん。一回会っただけなのに、



こんな話されちゃ困るよね」




少し上擦った声で謝罪し顔を背もたれの方に向けた。

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設定タグ:名探偵コナン , 安室透 , 降谷零   
作品ジャンル:アニメ
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Nattu(プロフ) - かるぴんさん» わーー!かるぴんさんんん!;;私の厚かましいお願いに応えていただきありがとうございます;;;とっても嬉しいです;;だいぶ回復してきたので再開いたします〜作品を好きでいてくれるかるぴんさんのお声もあって続けることができてます…!いつもありがとうございます!! (8月1日 23時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - Nattuさん!体調が芳しく無いのですね( ; ; )1日でも早く元気になりますように( ; ; )この作品が大好きです!(*´꒳`*) (7月28日 2時) (レス) @page26 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
Nattu(プロフ) - かるぴんさん» コメントありがとうございます!気づくの遅くなってしまい申し訳ございません…!沢山嬉しい言葉があって励みになります。にこにこしながらコメント見させていただきました^^笑ゆっくりではありますが温かく見守っていただけると幸いです。いつもありがとうございます! (7月28日 1時) (レス) id: 37a11942bb (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 初めまして今までたくさん夢小説を読んできましたが、こんなに心が動かされたのは初めてです!甘すぎない雰囲気が大好きです!これからも2人がどうなるのか陰ながら見守らせていただきます!! (7月5日 0時) (レス) @page2 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Nattu | 作成日時:2023年7月4日 0時

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