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それから萩原と食事を重ね、彼は言った。
「Aちゃん、俺と付き合わない?」
酒の入った夜道だった。
熱を帯びた頬がさらに熱くなった。
互いにもういい大人だ。
相手が自分をどう見ているかなんて、なんとなくわかる。
特に人を疑うことが多い仕事に就いている以上、そういったことには敏感だ。
帰路を歩む足を止め俯いていると、
「まだ、零が好き?」
近づいてきて萩原が言った。
男はそっかーと声を上げて、楽しそうに笑う。
「前も言ったけど、私別に総代のこと好きっていう訳じゃ」
「そういうの世間じゃあ、ツンデレっていうんだってなあ」
「だから、本当に好きじゃないんだって!」
声を上げて否定すれば、萩原はAに顔を寄せて、
「じゃあ、付き合お。俺達」
少し顔を赤らめて恥ずかしそうに言った。
警察学校の時もこうして卒業してから何度か会っていても、別に彼のことは嫌いじゃない。
むしろ、明るくていい人だと思う。
だから、こうして何度も休日に会って食事をしている。
萩原の視線が熱い。
それに影響されるように、耳まで熱が昇って、
「…いいよ」
聞こえるか聞こえないかの声で返事をした。
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「お疲れ様でした」
ポアロを出て車を走らせる。
(風見に会うまではまだ時間があるな)
にぎやかな街を抜け目的地へと向かう。
車を停め、迷うことなくそこに行き、
「一年ぶりだな」
そう言い、彼の前で手を合わせる。
「もう僕だけになってしまったな。
そういえば、懐かしい奴に会ったんだ…ん?」
線香に並ぶようにして、煙草の吸殻が刺さっている。
それを拾い上げて見てみると、フィルター部分には何もついていない。
(萩原にお姉さんがいると聞いたが、身内がそんな罰当たりなことしないだろうし…
恐らくこれまでもあったんだろうが、家族が片付けていたんだろうな)
それをごみ箱に捨てていると、墓地の管理人が通りかかって、
「ああ。お久しぶりです。もうそんな時期ですか」
安室に声を掛けてきた。
会釈すると、彼は手元の煙草に気が付いて声を上げる。
「また置かれてましたか」
どうやら彼は悪戯ではないことは分かっていたらしい。
安室から煙草を奪い返し、またそれを刺して、
「今日だけはこのままにしてあげてください。
お二人にとって大事なものみたいですから」
嬉しそうに微笑んだ。
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Nattu(プロフ) - かるぴんさん» わーー!かるぴんさんんん!;;私の厚かましいお願いに応えていただきありがとうございます;;;とっても嬉しいです;;だいぶ回復してきたので再開いたします〜作品を好きでいてくれるかるぴんさんのお声もあって続けることができてます…!いつもありがとうございます!! (8月1日 23時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - Nattuさん!体調が芳しく無いのですね( ; ; )1日でも早く元気になりますように( ; ; )この作品が大好きです!(*´꒳`*) (7月28日 2時) (レス) @page26 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
Nattu(プロフ) - かるぴんさん» コメントありがとうございます!気づくの遅くなってしまい申し訳ございません…!沢山嬉しい言葉があって励みになります。にこにこしながらコメント見させていただきました^^笑ゆっくりではありますが温かく見守っていただけると幸いです。いつもありがとうございます! (7月28日 1時) (レス) id: 37a11942bb (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 初めまして今までたくさん夢小説を読んできましたが、こんなに心が動かされたのは初めてです!甘すぎない雰囲気が大好きです!これからも2人がどうなるのか陰ながら見守らせていただきます!! (7月5日 0時) (レス) @page2 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2023年7月4日 0時