◇ ページ43
「ヒロト君、おやつ持ってきたよ」
部屋にノック音が響いて扉を開けると、髪を一つに束ねたAが笑って言った。
お盆に乗せられた、俺の分のケーキとコーヒー。溢さないようにと気を張っていたのか、その表情にはまだ緊張が残っていた。
「ありがとう。じゃあ、少し休憩しようかな」
「うん。えっと…」
「あ、それ貰うよ。Aはもう食べたの？」
何処に置こうかと俺越しに部屋を見渡すAから、そっとお盆を受けとる。自分の机の上を軽く片付けて、空けたスペースにカップとケーキの乗った皿を並べた。
「ううん、まだ。今瞳子さんが準備してくれてる」
「そっか。…ねぇ、良かったら一緒にどうかな？」
「えっ、いいの？」
俺の提案にAは嬉しそうに頷く。俺は扉を開けたままにして、彼女がもう一度戻ってくるのを待った。
◇
「美味しかったね」
「うん。これでまた頑張れるよ」
Aは勉強机の椅子に、俺はベッドに腰掛けた。
普段俺の部屋に入ることなんて無いから、Aは俺の本棚に並んだ小説や参考書に興味津々だった。ケーキを食べなから、少しだけ俺の知識を披露して見せた。
俺はカップに残ったコーヒーを飲みきって、立ち上がる。
「これ、俺が片付けてくるよ」
「あ、大丈夫だよ。ヒロト君は勉強続けて」
俺が皿を重ねるのを見てAも同じように立ち上がった。俺の手をそっと押さえて首を振る。
「これくらい私がやるから」
「そうかい？…ありがとう」
「じゃあ、また晩御飯の時呼びに来るから。頑張ってね」
来たときと同じようにお盆を持って笑うA。俺を気遣ってくれることに対して、嬉しいような、少し寂しいような気持ちになる。
もう少し、二人の時間が作られたら良いんだけどな。
「A」
「ん？」
「来週末空いてるかな？俺、練習がオフなんだ。良かったら何処か行かない？」
けれど、少ないからこそ。やっとの思いで手に入れられる時間を、一層大切にしようと思えるんだろう。
「本当に？空いてるよ、何処行こっか？」
嬉しそうに笑ってくれるAのことも、こんなにも愛しく思えるんだろう。
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輝(プロフ) - 布都御霊さん» コメントありがとうございます。最後まで完結できたのは皆様のお陰です！温かいお声、本当にありがとうございます(*^^*)キュンキュンできるようなお話を書けるようこれからも精進して参ります！ (2019年6月24日 20時) (
レス) id: c19a41cb32 (このIDを非表示/違反報告)
布都御霊(プロフ) - 「君に、初めまして」完結おめでとうございます。何度も泣かせていただきました(泣)もう、この2人の初々しい見てるだけでキュンキュンするようなお話が見れなくなるのかと考えるとまた涙がぁ〜。(/_;) (2019年6月17日 3時) (レス) id: ac233dda56 (このIDを非表示/違反報告)
狩間篤花(プロフ) - 明日香さん» いつもコメントありがとうございます(^^)出来るだけ早く更新できるよう頑張ります…！ (2018年8月5日 7時) (レス) id: 9ce959db1f (このIDを非表示/違反報告)
明日香 - 久しぶりの更新ですね...！ずっと待ってました！！ありがとうございます^ ^今回も楽しく読ませていただきました。次回の更新も楽しみにしていますね！ (2018年7月31日 20時) (レス) id: cb7b132aff (このIDを非表示/違反報告)
楓 - 大丈夫ですよ^^更新されるまで、気長にずっと待ち続けます。応援してますね^^ (2018年6月18日 22時) (レス) id: cb7b132aff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狩間篤花 | 作成日時：2018年3月26日 16時
