◇ ページ48
「お父さんはお父さん、か…」
神月さんがそう呟くのを見て、俺は察する。よく考えもしないで、馬鹿なことを言った。父親という文字の重みは、俺と神月さんとじゃ全然違うのに。
「…基山君、そんな顔しないで…？お父さんのことは…もう大丈夫だから」
俺が謝る前に、神月さんは眉を下げて笑った。重なった手は離れずに、お互いの体温を確かめ合っている。
「だけど、ずっとお父さんのこと忘れられなくて…。心の何処かに穴が開いたみたいに」
「神月さん…」
「変だって…異常だって分かってる。だけど私を愛してくれる人は…お父さんだけだったから」
どう頑張ったって、お父さんはお父さんのままなんだね。…そんな、か細い声。
俺は、神月さんの手をギュッと握った。きっと自分でも言い表せない傷が。深く、彼女の心に刻まれている。
複雑で、絡み合ったその傷は、消えることはもう無いだろうけど。
「俺が愛すよ」
「…！」
「失った分より、ずっと…神月さんのこと、愛してみせる」
神月さんが父親から貰った愛を、否定はしない。だけど、それが彼女を傷付けたことに変わりはないから。
「俺も、神月さんに出会うまでこんな気持ち知らなかった。…でも、神月さんに本当の愛を教えてあげられるよう…俺、頑張るからさ」
「基山君…」
夕日のせいなのか分からないけど、俺から目を逸らした彼女の頬が、うっすら赤らんでいるように見えた。
少しだけ間が開いてから、ゆっくりと神月さんの唇が動く。
「…私も、基山君と一緒に見つけたい。愛するってことが…どういうことなのか」
彼女の瞳は、真っ直ぐに俺の目を見つめていた。初めて俺に触れられた時のあの怯えた眼差しは、もう何処にも無い。
彼女の頬に涙が伝った。その滴に込められた気持ちは、きっとさっきのものとは違って。
「…側に居て良い？」
彼女の長いまつげに水滴が残って、キラキラと光っていた。柔らかい風に、その真っ白な髪が流れて。茜色の空を反射し、うっすらとオレンジ色に染まる。
「勿論。…断るわけ無いさ」
美しかった。笑った顔が眩しくて、俺はうっかり目を細めそうになる。だけどその笑顔を、ちゃんと見ていたかったから。
「…」
俺達の背中を見つめる視線にも、気付くことが出来なかった。
「…ヒロト。私が間違っていたようだ…」
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狩間篤花(プロフ) - リベリさん» コメントありがとうございます！お久しぶりですー(°▽°)二人の関係、楽しんで書かせてもらっています！四章の方で頑張っておりますので、そちらもよろしくお願いいたします(о´∀`о) (2018年1月4日 22時) (
レス) id: 9ce959db1f (このIDを非表示/違反報告)
リベリ - お久しぶりです!!本当にいつ見ても感動します!!風介...二人の為に...優しいですね!!どんどんいい方向に進んでいますし、二人が進展する事を願っています!!頑張って下さい!!^ω^/ (2017年10月29日 2時) (レス) id: cb7b132aff (このIDを非表示/違反報告)
狩間篤花(プロフ) - リベリさん» 心配をお掛けして申し訳ございません…！出来るだけ更新できるよう、最善を尽くして参ります(о´∀`о) (2017年9月5日 23時) (レス) id: 9ce959db1f (このIDを非表示/違反報告)
リベリ - 狩間篤花さん» わぁ...！本当ですか！？嬉しいです！！更新なさっていなかったので、心配しました...！これからも更新頑張って下さい！！ (2017年9月2日 17時) (レス) id: cb7b132aff (このIDを非表示/違反報告)
狩間篤花(プロフ) - リベリさん» これから大会編の方も更新していきますので、よろしくお願いいたします(о´∀`о) (2017年9月1日 22時) (レス) id: 9ce959db1f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狩間篤花 | 作成日時：2017年6月27日 16時
