◇ ページ44
「…神月さん」
「学園長からも、涼野君からも…聞いたよ。基山君、吉良財閥の後継者なんだね…」
「…うん。俺の口から言えなくて、ごめん」
引き吊った笑顔。彼女の複雑な気持ちが、痛いほど伝わってくる。
ずっと黙っていた。それは、当たり前のことだ。知り合いや同級生に話していいようなことじゃない。
だけど、特に神月さんだけには知られたくなかった。後継ぎとしてじゃなく、基山ヒロトとして俺を見て欲しかったから。
だけど神月さんは、彼女の過去や家族の話…辛いはずなのに、沢山聞かせてくれた。
「俺は、自分のことを一度も話さなかったよね。…神月さんのことには、勝手に踏み込んだのにさ」
「勝手だなんてっ…基山君のことを責めるつもりじゃ…」
「分かってる。でも俺…自分のことしか考えてなかった」
ごめん。神月さんの手を握って、彼女の頬に光る涙の痕を、指でそっと拭った。
なのに、またその表情が歪んで、いくつもの涙が零れる。俺の手を伝って、ベンチに落ちていく。
その柔らかな頬に触れる俺の手に、震える彼女の手が重なった。
「…ごめん。私、怖くて…基山君ともう、一緒に居られなくなるのが…」
俺の頭に父さんの顔が浮かぶ。神月さんに向かって、冷たい視線を向けるその表情が。
「やっぱり基山君には…私なんか、釣り合わないなって…」
「違うっ。そんなの、関係ないよ。俺は絶対神月さんから離れない。父さんが何と言おうと、俺の気持ちは変わらないし、俺には…神月さんしか居ないから」
考えることもなく俺の口から紡ぎ出された言葉は、自分自身に言い聞かせるものでもあった。
何があっても父さんには負けない。俺はもう、父さんの言う通りに動く駒じゃないから。
「これからもずっと一緒に居たい。だから…ちゃんと話すよ、俺のこと」
「…うん」
「だからって、絶対側に居てなんて強制はしない。ただ…聞くだけ、聞いて欲しい」
「…うん。教えて？基山君のこと」
潤んだ瞳は、その縁を涙で歪めながらも、真っ直ぐに俺の目を見ていた。
「私…もう嘘は付かないって。逃げないって、決めたから」
「神月さん…」
「基山君の全部を、受け止める。基山君が、私にしてくれたみたいに」
その笑顔が、ずっと近くで見ていられるように。俺ももう、逃げないよ。
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狩間篤花(プロフ) - リベリさん» コメントありがとうございます！お久しぶりですー(°▽°)二人の関係、楽しんで書かせてもらっています！四章の方で頑張っておりますので、そちらもよろしくお願いいたします(о´∀`о) (2018年1月4日 22時) (
レス) id: 9ce959db1f (このIDを非表示/違反報告)
リベリ - お久しぶりです!!本当にいつ見ても感動します!!風介...二人の為に...優しいですね!!どんどんいい方向に進んでいますし、二人が進展する事を願っています!!頑張って下さい!!^ω^/ (2017年10月29日 2時) (レス) id: cb7b132aff (このIDを非表示/違反報告)
狩間篤花(プロフ) - リベリさん» 心配をお掛けして申し訳ございません…！出来るだけ更新できるよう、最善を尽くして参ります(о´∀`о) (2017年9月5日 23時) (レス) id: 9ce959db1f (このIDを非表示/違反報告)
リベリ - 狩間篤花さん» わぁ...！本当ですか！？嬉しいです！！更新なさっていなかったので、心配しました...！これからも更新頑張って下さい！！ (2017年9月2日 17時) (レス) id: cb7b132aff (このIDを非表示/違反報告)
狩間篤花(プロフ) - リベリさん» これから大会編の方も更新していきますので、よろしくお願いいたします(о´∀`о) (2017年9月1日 22時) (レス) id: 9ce959db1f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狩間篤花 | 作成日時：2017年6月27日 16時
