◇ ページ43
ロビーの方は普通の診療や検査でこの時間は忙しいらしく、落ち着いて話ができるであろう、一つ下の階にある中庭に連れて行ってくれるらしい。
「涼野さんは、別のスタッフが案内して来ますので」
「はい、ありがとうございます」
体が冷えないように上着を一枚借り、中庭に出る。
夕日でオレンジ色に輝く空。汗だくになって走っていた昼間を忘れてしまいそうな、気持ちの良い風。
「次の点滴の時間は五時なので、また呼びに来ますね」
看護師さんの背中を見送り、中庭を少し歩き回ってみる。ちらほらと他の患者さんの姿も見えるけど、本当に静かだ。
真っ白な病室では見られなかった緑が、俺の心をホッと落ち着かせてくれた。
「…あっ」
ふと小さな声がして、俺は振り返る。そこには、
「基山君…？」
「…神月さん…」
彼女が一人だけで、俺の方を見つめて立っていた。目が合うと、その顔が綻ぶ。
「よかった…。涼野君から、目を覚ましたってちゃんと聞いてはいたんだけど、ずっと心配で…」
俺の前で、彼女の足が止まる。もう大丈夫？と声をかけてくれるのに、俺はその笑顔に釘付けで。
「…えっ、と。風介は…？」
そんな、的はずれな返事を返してしまった。
「あ、うん。折角だから、二人で話せば良いって…でも、下で待ってくれてるよ」
「そっか」
落ち着かなくて、少しでも気が楽になればとベンチに座る。でも、神月さんとの距離がもっと近付いて…逆効果だったかもしれない。
今度は自分から話そうと言葉を探すけど、俺にはまず、言わなきゃいけないことがあった。
「…今日は、ごめん…」
「…そんな」
「俺、試合で駄目なとこ見せたし。わざわざここまで来させて、それに…」
「…ううん。こんなことになったのは、私のせいだよ」
俺の言葉を遮って、神月さんはごめんねと俺の方を見る。
悲しそうな目。俺は、君にそんな顔をして欲しくない。また自分を追い詰めようとしないで。
「神月さんが謝る必要なんて無いよ」
「…基山君にそう言ってもらえると、安心する」
「そんな…。事実だよ」
「私…これからも基山君と一緒に居て、良いのかな…？」
神月さんは柔らかく微笑んだ。頬に流れた涙が、夕日を反射して儚く光った。
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狩間篤花(プロフ) - リベリさん» コメントありがとうございます！お久しぶりですー(°▽°)二人の関係、楽しんで書かせてもらっています！四章の方で頑張っておりますので、そちらもよろしくお願いいたします(о´∀`о) (2018年1月4日 22時) (
レス) id: 9ce959db1f (このIDを非表示/違反報告)
リベリ - お久しぶりです!!本当にいつ見ても感動します!!風介...二人の為に...優しいですね!!どんどんいい方向に進んでいますし、二人が進展する事を願っています!!頑張って下さい!!^ω^/ (2017年10月29日 2時) (レス) id: cb7b132aff (このIDを非表示/違反報告)
狩間篤花(プロフ) - リベリさん» 心配をお掛けして申し訳ございません…！出来るだけ更新できるよう、最善を尽くして参ります(о´∀`о) (2017年9月5日 23時) (レス) id: 9ce959db1f (このIDを非表示/違反報告)
リベリ - 狩間篤花さん» わぁ...！本当ですか！？嬉しいです！！更新なさっていなかったので、心配しました...！これからも更新頑張って下さい！！ (2017年9月2日 17時) (レス) id: cb7b132aff (このIDを非表示/違反報告)
狩間篤花(プロフ) - リベリさん» これから大会編の方も更新していきますので、よろしくお願いいたします(о´∀`о) (2017年9月1日 22時) (レス) id: 9ce959db1f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狩間篤花 | 作成日時：2017年6月27日 16時
