◇ ページ19
「おいおい、どうしたんだよ？」
「基山君っ、何かあったの？」
晴矢と神月さんの声が聞こえたかと思うと、二人が騒がしくバスから降りてくる。後に続いて緑川も急いで出てきた。
さっきの風丸君の声が聞こえたのか、三人とも険しい顔で、神月さんに至ってはかなり焦った表情をしていた。
「…いや」
「…一郎太、基山君に何か言ったの？怒ってる声、聞こえたよ…？」
「気にしないでくれ…何でもない」
「ちょっと…そっぽ向かないでよっ」
誤魔化す風丸君を不審に思ってか、神月さんは彼に強く言う。服の裾を引っ張って自分の方を向かせる姿が必死で可愛い。
…そう思う俺は、最低だ。
良くない思考を振り払い、俺は風丸君の方に回って自然なようにカバーする。
「ごめん、本当に大したことじゃないんだ。サッカーの話しててさ。少し言い合いになっただけ」
「サッカー…？」
「おい、基山。別に…」
「練習のことで俺がちょっと甘えたこと言ったから…。風丸君はやっぱりまだサッカーが好きなんだね。すごくストイックでさ」
「あ、うん。一郎太は、すごく練習熱心で…いつもスタメンだったんだよ」
「本当？すごいな、俺も見習わなきゃ」
焦っちゃったよー、と神月さんは苦笑いを浮かべる。
「一郎太、基山君に私のことで何か言ったんじゃないかと思って…心配性だから」
「…心配性で悪かったな」
「喧嘩し始めたのかと思って、ちょっと驚いたよ。何もないなら良かったけどさ」
ね？と相槌を求める緑川に、晴矢は嫌そうな顔をしながらも同意する。
どうやら、怪しまれずに済んだみたいだ。それが分かれば、もうこの話は終わらせてしまいたい。
「えっと…それで、神月さんは晴矢と何か話したの？」
「うん。サッカーのこととか、色々教えてもらったよ」
俺が無理矢理話を変えても、神月さんは笑顔でそう答えてくれるから、少し罪悪感を感じた。
「そっか。楽しんでもらえたみたいで良かった」
「南雲ったら、女の子と話すの慣れてないから、本当ソワソワしてて…痛たたたっ！！」
「余計なことは話さなくていいんだよ、この馬鹿…」
「分かったから髪引っ張らないでよバカーッ！！」
いつものように喧嘩を始める二人を宥めながらも、神月さんは楽しそうに笑ってくれる。
ホッとした俺の視界の端で、風丸君は、静かに彼女のことを見つめていた。
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狩間篤花(プロフ) - 夜見さん» コメントありがとうございます(^^)楽しんでいただけているみたいで、本当にうれしいです(°▽°)これからも頑張ります！ (2017年6月3日 18時) (
レス) id: 9ce959db1f (このIDを非表示/違反報告)
夜見(プロフ) - この作品とっても面白いです、何度も読んでます.....！更新頑張ってください！ (2017年5月30日 23時) (レス) id: 101aec839b (このIDを非表示/違反報告)
狩間篤花(プロフ) - 凪沙さん» コメントありがとうございます(^^)そんな風に言っていただけるなんて…！これからも面白いと思っていただけるような作品を作っていきたいと思います！(°▽°) (2017年5月30日 18時) (レス) id: 9ce959db1f (このIDを非表示/違反報告)
凪沙(プロフ) - ヒロトオチということで読んでみたのですが…とてつもなく面白かったです((こんな文才が欲しいという尊敬もあるし、ヒロトのちょっとした不器用さとかみんなのキャラとか表現の仕方とか…それにストーリーも面白くてつい、一気読みしてしまいました！ (2017年5月29日 20時) (レス) id: 38003636ff (このIDを非表示/違反報告)
舞優(プロフ) - 狩間篤花さん» はいっ！頑張ってくださいぃぃぃ！ (2017年5月10日 22時) (携帯から) (レス) id: 7761e1fb5e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狩間篤花 | 作成日時：2017年5月4日 19時
