◇ ページ46
「基山くーん！」
「あっ、神月さん」
「ごめんね、電車が遅れちゃってて…」
「大丈夫だよ。時間にはまだまだ余裕があるし」
走ってきた神月さんは、白いパーカーに身を包んで、黒のロングスカートの裾を揺らしていた。いつものふんわりとした雰囲気が封印されている。
あっという間に、土曜日はやって来た。朝から練習があって、危うく遅れるところだったけど、何とか神月さんを待たせることは免れた。
「そうだね。じゃあ、バス停に行こっか」
「うん」
神月さんと並んで歩く。心地良い風が神月さんの髪を揺らして、いつもの優しい香りを漂わせた。
駅も小さかったし、人もあまり居ない。下調べもしたし、ある程度ここのことは分かってるつもりだったけど、思っていた以上に小さな町のようだ。
すごく長閑で、気持ちが良い。
「照美君は、もう先に着いてるんだって。晩御飯の準備中らしいよ」
「知り合いの別荘かぁ…やっぱり彼の家系はすごいんだね」
「お父さんもお母さんも超エリートなんでしょ？照美君も成績優秀で容姿端麗だし…将来はすごい人になるんだろうなぁ」
神月さんの頭には、きっと俺が考えているのと同じ、かっちりとスーツを着こなすアフロディの姿が浮かんでいるのだろう。
それと同時に、自分の将来のことが頭の中に垣間見える。父さんの会社を継ぐ、俺の姿が。
神月さんはきっと、すごいと褒めてくれるだろうけど…自分では、ただ親の力にすがり付いているだけのようにしか思えなくて。
「基山君？」
「…ん？どうしたの？」
「黙り込んじゃうから…長時間の電車で疲れちゃった？」
「あ、ううん…そんなことないよ」
「なら良かった。大変なのはここからだもん、目的地までバスで一時間半だよ」
「…向こうに着いたら、すぐ寝てしまいそうだね」
「私はバスで寝ちゃいそうだよ」
バスで席に座るなら、きっと俺達は隣同士だ。神月さんが数センチの距離に居る。想像しただけで緊張してしまう。
だけど、一時間半の道のりを二人で過ごすなんて…眠ってしまってはもったいない。
夢の中でだって神月さんと会えるかもしれない。でも、今日はちゃんと、隣に居る彼女を感じていたい。
いつもは一緒に居られない分、今日は側に居させて欲しいんだ。
ラッキーカラー
あずきいろ
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狩間篤花(プロフ) - 真白さん» ありがとうございます(°▽°)世界観としては、単眼のセレーネの平行世界…という設定になっていますので、この先の展開もお楽しみに…(^○^) (2017年4月5日 7時) (
レス) id: 9ce959db1f (このIDを非表示/違反報告)
真白 - 単眼のセレーネから来ました!アレスの天秤を舞台にした作品…！展開が楽しみです!にしても神月ちゃんが出てくるとは…！ (2017年4月4日 20時) (レス) id: f20ddfb271 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狩間篤花 | 作成日時：2017年4月3日 22時
