chapter:5 夢幻泡影 ページ41
「今日ね、話したよ。基山君に私のこと」
「…そうか。で、どうだったんだ？」
今日は、俺がAの部屋にお邪魔していた。
グラスに入ったオレンジジュースを飲みながら、隣に居るAに目を向ける。
よく遊びに来るのに、Aのお母さんは毎回丁寧に飲み物とお菓子を出してくれる。今日は手作りのパウンドケーキが二切れ、白い小さなお皿に乗って俺の前に置かれていた。
「うん…。基山君、嬉しいって言ってくれた。褒めてくれてありがとうって。こんな気持ち、初めてだって」
「初めてって…基山って、女子からも人気だし、褒められることも多いんじゃないのか？」
「私だから、嬉しいって…」
「…ふーん」
「一郎太がアドバイスしてくれたからだよ。ありがとう」
＿＿お前がそうやって信じようと思えた相手なら、本当のAだって受け止めてくれるんじゃないか？
まぁ…確かに俺は昨日の夜、そう言った。Aは今まで経験してきた出来事のせいで、人よりも、誰かを信頼するっていう気持ちが欠けていたから。
だから、人を信じることを身に付ける良いチャンスだと思って。
「…今日、二人っきりで会ったんだよな？」
「あ、うん」
「怖くなかったのか？掘り返したくないけど、昔のこともあるし…」
だけど、基山の言動を聞いていると、どうもAに気があるように思えて仕方がない。何かの拍子で、Aに手を出す可能性は大いにある。
もしそうなら、人に慣れるチャンスどころか、逆に二度と誰も信じられなくなってしまう。それに。
＿＿何してるんだよっ！Aに触るなっ！！
＿＿違うんだよ、これは、ただっ…！
俺以外の男が、Aに触れる。それに対して、 あの一件 があってからというもの、どうも良い気分はしないんだ。
「…基山君は、大丈夫だよ。そんなことしない」
「そうか…？Aがそう思えるなら良いけど…俺はお前に傷付いて欲しくないんだ」
「それは…」
「もし何かあったら、またお前は誰にも話さないで自分だけで傷付こうとするだろ？そんなこと二度とさせない。何かあったら、ちゃんと俺に話せ」
良いな？俺が念押しすると、Aは小さく首を縦に振る。その手は、俺のシャツの裾をそっと握り締めていた。
…Aがこんなことするのは、このまま俺だけだったら良いのに…。
…なんて、儚い願い。
ラッキーカラー
あずきいろ
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狩間篤花(プロフ) - 真白さん» ありがとうございます(°▽°)世界観としては、単眼のセレーネの平行世界…という設定になっていますので、この先の展開もお楽しみに…(^○^) (2017年4月5日 7時) (
レス) id: 9ce959db1f (このIDを非表示/違反報告)
真白 - 単眼のセレーネから来ました!アレスの天秤を舞台にした作品…！展開が楽しみです!にしても神月ちゃんが出てくるとは…！ (2017年4月4日 20時) (レス) id: f20ddfb271 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狩間篤花 | 作成日時：2017年4月3日 22時
