◇ ページ29
風介は涼しい顔でそう言ったけど、俺は名前を聞くだけで罪悪感に襲われる。当の本人は、二つ隣の部屋に居るんだろうけど。
八神玲名。俺達と同じお日さま園に住む子で、去年学校で女子達と一悶着起こした張本人だ。
学校で同じ施設に住んでいることはあえて言わないし、端から見れば玲名と俺はただのクラスメイトだった。
それなのに、玲名は他の生徒と比べて特別俺と仲が良かったから…自分で言うのも難だけど、嫉妬されるのも仕方なかった。それに俺が、もっと早く気付いてたら。
玲名は気が強いし、ちょっとしたトラブルから喧嘩に発展することは目に見えていた。
今は別の学校に編入して、特に何もなく過ごしているけど。
俺にとってはあの出来事が、とても辛いもので。初めて自分がどういう立ち位置に居るのか思い知った。
…だから、神月さんだって俺と居たらまた女子に目を付けられてしまうのだって分かってたはずなのに。
自分の欲を優先して、結果的に神月さんを傷付けてしまった。
「…」
「…まぁ、いい。しかし、上手く行っていたのに残念だな」
「でもさぁ、神月サンもちょっと自分勝手じゃね？だってつい最近までヒロトになついて一緒に居たのにさ、女子の一言でバイバイとかさ」
「仕方ないよ、女の子って怒らせると怖いし…」
俺抜きで、三人は話を進めていってしまう。…ダメだ。思い出したら、止まらなくなる。
入学式で見た彼女の笑顔。いつも先に言ってくれるおはようの声。風になびく髪に、スマホを握る綺麗な手。彼女の人柄が見えた可愛らしいメッセージ。
触れてみたかった。もっと話してみたかった。もっと声を聞きたかった。すぐそこまで近付いたのに…。
結局、神月さんと一緒に居るなんて夢のまた夢？夢の中でしか許してもらえないのか？
浮かんだ彼女の笑顔が、自分の涙で歪んでいく。
「っ…」
「おいおい…泣くなよ馬鹿」
「…ヒロト。あまりそう気を落とすな。どうにかして彼女と話す方法を探せば良い」
「どうやってさ…？俺はこれ以上神月さんを苦しめたくないよ…」
「今までの話を聞いていても、私が思うに…神月さんにとって女子に責められるより、君と話せない方が辛いんじゃないだろうか」
俺は首を振って彼の言葉を聞き流す。神月さんと会ったこともないのによく言うよ。
三人の励ましの言葉は、今の俺にはほぼ逆効果だ。
ラッキーカラー
あずきいろ
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狩間篤花(プロフ) - 真白さん» ありがとうございます(°▽°)世界観としては、単眼のセレーネの平行世界…という設定になっていますので、この先の展開もお楽しみに…(^○^) (2017年4月5日 7時) (
レス) id: 9ce959db1f (このIDを非表示/違反報告)
真白 - 単眼のセレーネから来ました!アレスの天秤を舞台にした作品…！展開が楽しみです!にしても神月ちゃんが出てくるとは…！ (2017年4月4日 20時) (レス) id: f20ddfb271 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狩間篤花 | 作成日時：2017年4月3日 22時
