◇ ページ26
「基山君…」
「…ごめん。でも、俺もっと話したくて…」
少し間が空いて、神月さんは消えそうな声で頷いた。曇りだして暗くなった空が、彼女の顔にかかる影をより濃くさせる。
薄く色付いた唇から途切れ途切れに吐息を溢しながら、涙が頬を伝う度にカーディガンの袖で顔を擦った。
「去年さ…仲の良かった女の子が、今日みたいに呼び出されて…」
最終的に、彼女は転校してしまうはめになった。
俺の言葉を聞いて、一層神月さんの表情は淀んで行く。雨が降りそうな空を見上げて、俺はあの日のことを思い出した。
今日と同じように、厚い雲が空を覆っていた。たまたま非常階段から響いて聞こえた声に、俺は何となく耳を澄ませて。
そして、後悔した。
＿＿あんたねっ…！ベタベタしてるのが気に入らないって言ってんの！！
＿＿どうして怒るの？自分から話し掛けないのはあんた達でしょッ。それに、別にヒロトは誰かの物じゃない！
「彼女が傷付いたのは俺が一緒に居たせいだ。…あれからは、あまり女の子に干渉しないようにしてたんだけど」
俺は頬を掻いて少し黙った。視線を落とすと、神月さんの足が震えていて、俺はまた彼女の顔へと目線を戻す。
目が合うとまた逸らしてしまって、神月さんの横の方をキョロキョロと見つめながら、重い口を開く。
「神月さんとは…話したくて」
「…何で…？」
「それは…」
夢の話なんて、絶対に言うべきじゃない。ずっと想い続けていたなんて、やっと出会えただなんて。
そんなことは、常識的に考えてあり得ないし、変だ。俺だってそれくらい分かっている。
俺は自分が唇を噛んで話せないで居る時間が、すごく長く感じた。この気持ちを、何て伝えるべきか分からない。
「…ごめん、どう言えば良いか…」
情けない、とどうしようもない腹立ちを胸の中に押し込みながら、俺はやっとのことで口を開いた。結局、答えは出ないけど。
ポツリと鼻に滴を感じた。二人同時に空を見上げて、掌を空に向け雨が降ってきたことを確認する。
「…戻ろう、基山君。風邪引いちゃうよ」
「…うん。でもまだ話は…」
「…ごめん…私、もう、辛い思いしたくないからっ…」
神月さんは俺の視界から消える。白い尾を引くように、その髪を揺らしながら。
俺は走り去る彼女を、呼び止めることさえ出来なかった。
ラッキーカラー
あずきいろ
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狩間篤花(プロフ) - 真白さん» ありがとうございます(°▽°)世界観としては、単眼のセレーネの平行世界…という設定になっていますので、この先の展開もお楽しみに…(^○^) (2017年4月5日 7時) (
レス) id: 9ce959db1f (このIDを非表示/違反報告)
真白 - 単眼のセレーネから来ました!アレスの天秤を舞台にした作品…！展開が楽しみです!にしても神月ちゃんが出てくるとは…！ (2017年4月4日 20時) (レス) id: f20ddfb271 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狩間篤花 | 作成日時：2017年4月3日 22時
