◇ ページ25
俺がごみ置き場の前についた時には、もう誰も居なかった。逆方面から校舎に戻ったのか、入れ違いになったみたいだ。
少し上がった息を整えつつ、俺は辺りを見回す。…やっぱり居ない。
何をされたんだろう、神月さん。酷いことを言われたりしたかな。
俺と話すなとか…言われていたとしたら。二度と神月さんと話せなくなる。
俺はスマホを取りだし、神月さんへとメッセージを送る。前の夜のことが信じられないくらいに素早く文面を打って、送信する。
ﾋﾟﾛﾘﾝ♪
「！」
本当に微かな音。でもちゃんと聞こえた。可愛らしい、機械音。
何処から聞こえたかは分からないけど、俺はそっと彼女の名前を呼ぶ。
「神月…さん？」
「ぇ…基山、君…？」
ごみ置き場の裏から白い髪が覗いて、弱々しい神月さんの声が…確かに、俺の耳に届いた。
俺の足は、自然と彼女の方へと向かっていく。驚いた顔をする神月さんの肩に触れ、少し赤くなった目を覗きこんだ。
「神月さんっ…！大丈夫…？」
「な…何で…」
「神月さんがこっちの方に来るのが中庭から見えたって、緑川が教えてくれて…」
「…」
「それで、こっちに来るなんておかしいと思って…」
「っ…」
「だから、心配になって…追いかけて来て…」
俺の手の力は、段々と弱まっていく。黙ったまま俺の顔を見つめる神月さんの表情が、みるみるうちに歪んでいくから。
俺が口を閉じた頃には、彼女の頬には大粒の涙が流れていた。声を上げることもなく、肩を震わせてただ涙を溢して。
「だ、大丈夫…？何か言われたの…？」
少しパニックになって、焦って、俺は神月さんの肩から手を離した。また触れようとしたけど、今にも壊れてしまいそうなその小さな肩は…俺から遠ざかった。
神月さんは俺から離れて、ごめんなさいと頭を下げる。
「基山君、いつもあんなに優しくしてくれたのに、私っ…も、もう…基山君と、話せないかもしれない…」
「な、何で…？」
その言葉を聞いた瞬間、俺の中の何かが溢れた。神月さんへの思いとか…色んなものが。
「…駄目だよ、そんなの。俺はもっと神月さんのこと知りたいよっ」
「え…？」
「やっとここまで話せるようになったのに…ここで終わりなんて嫌だ」
必死になっていた。せっかくこんなに近付いた距離を元に戻すなんて、絶対に嫌だったから。
ラッキーカラー
あずきいろ
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狩間篤花(プロフ) - 真白さん» ありがとうございます(°▽°)世界観としては、単眼のセレーネの平行世界…という設定になっていますので、この先の展開もお楽しみに…(^○^) (2017年4月5日 7時) (
レス) id: 9ce959db1f (このIDを非表示/違反報告)
真白 - 単眼のセレーネから来ました!アレスの天秤を舞台にした作品…！展開が楽しみです!にしても神月ちゃんが出てくるとは…！ (2017年4月4日 20時) (レス) id: f20ddfb271 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狩間篤花 | 作成日時：2017年4月3日 22時
