◇ ページ3
「おは…」
「神月ちゃん、おはよーっ！」
「おはよう、緑川君」
…緑川の明るい挨拶によって、俺の声は虚しくも掻き消された。
そのまま緑川に続いて、俺もおはようって言えたかもしれない。でも、振り絞った勇気をこうも簡単に消されてしまうと、心のダメージは大きいんだ。
俺は何も無かったかのように、ノートに目を戻した。
「…基山君」
でも、すぐにまた顔を上げる。柔らかい彼女の髪からふわりと香った、シャンプーの匂い。
「おはよう。朝から勉強なんて、さすがだね」
それは、ここが夢の中だと錯覚させるほどに、優しくて柔らかくて…俺を包み込むように流れていった。
「…おはよう」
「今ね、昨日の宿題教えてもらってるんだ」
「え、どこどこ？…あー、私も一年生の教科書引っ張り出してきて、そこ考えたよ。難しいよねー…」
「神月ちゃんも？なら俺が解けなくて当たり前だなぁ」
目の前で楽しそうに広がってく会話を、俺は眺めることしかできない。何か言おうにも、緊張で口が追い付かないから。
神月さんが視界から消える。すぐに、鞄を下ろす音がした。俺の二つ後ろの席が、神月さんの席。
「…今日も先越されてる」
ボソッと緑川が俺に言った。俺は毎朝彼に宣言している。今日こそは俺からおはようを言うと。
でも、それは未だに達成されていない。何らかの理由でいつも先に言われてしまうんだ。
でも今日は、緑川のせいだ。
「君が俺の声を遮ったんだよ」
俺がそう睨んで言ったら、緑川は眉毛を下げてまぁまぁ…と笑った。謝っているようで、謝る気が無さそうにも見える。
「でも本当可愛いよね、神月ちゃんってさ」
「…集中して。次の時間提出なんだよ、これ」
「とか言って、神月ちゃんとのこと一番気にしてるのはヒロトの方だろ？」
「もう教えないよ？」
「やだ！！ちゃんとやるからさっ…！」
俺が神月さんが気になっているのは、別に、可愛いからじゃない。
でも彼女は…俺の、初恋の人にそっくりなんだ。
ラッキーカラー
あずきいろ
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狩間篤花(プロフ) - 真白さん» ありがとうございます(°▽°)世界観としては、単眼のセレーネの平行世界…という設定になっていますので、この先の展開もお楽しみに…(^○^) (2017年4月5日 7時) (
レス) id: 9ce959db1f (このIDを非表示/違反報告)
真白 - 単眼のセレーネから来ました!アレスの天秤を舞台にした作品…！展開が楽しみです!にしても神月ちゃんが出てくるとは…！ (2017年4月4日 20時) (レス) id: f20ddfb271 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狩間篤花 | 作成日時：2017年4月3日 22時
