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眠り姫 (29) ページ45

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「どうしても行くのか」
「ああ」
「地上で仕事を見つけるわけには行かないのか?」
「無理だよ。俺の命を…脳みそだけでも助けたのは医者の独断じゃない。マザーの判断があったからさ。マザーは俺のシャトル・パイロットとしての能力を惜しんだ。未知の銀河系までシャトルを運んでいくのは、コンピューター任せでは無理だ。コンピューターはデータがあってこそ、それを解析出来るんだからな。目標物も何も無い宇宙空間を飛ぶには、訓練だけでは身につかない感覚が必要なんだよ。シャトル・パイロットをやめたら、維持に金のかかるサイボーグなんて面倒みてくれなくなるさ」
「そんな」
確かに脳以外が全て機械である薮の身体では、身体の一部分だけを機械化したサイボーグよりも維持が困難であるのは容易に予想できるが。
「伊野尾をよろしくな、高木。じゃあ、元気で」
歩いていこうとした薮=エースの背中に、高木は声をかけた。
「薮くん、その顔は衝撃には弱いの?」
「そんなことはない。接触による感覚もほとんど変わらないよ」
答えを聞いた途端、高木は薮=エースの腕を引っ張って自分の方を向かせ、その身体が横向きになった途端、その頬を握り締めた拳で殴りつけた。身体がその重量に見合う音を立てて床に倒れこむ。薮=エースは殴られた頬をさすりながら、ゆっくりと立ち上がった。
「効いたよ、高木…伊野尾を幸せにしてやってくれ」
「…薮くん!」
「20年後に会おう…後で医者に行けよ。顔のベースは強化セラミックで出来てる。下手すりゃ骨折だ」
そう言うと表情が微かに動く。苦笑したのだ、と高木は思った。
「元気で」
そう言って、薮=エースは去って行った。 高木が部屋の中に戻ってくると、お手伝いアンドロイドが高木が戻ってくるのを待っていたように近づいてきた。
「どうした?」
「伊野尾様が、起き出して、何かお仕事を始めて…」
「伊野尾くんが?」
何をしているのだろうと思い、入ってもいいかと中へ尋ねればひとつ片付けなければならない仕事があるからダメだと拒否された。
その日は夜まで伊野尾が部屋から出てくることはなかった。



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ひなた(プロフ) - はじめまして。コメントお邪魔します。お話がそろそろ終わりに近づいてきたようで早く結末が読みたい反面、まだずっと読んでいたい、そんな葛藤と戦ってます。すてきなやぶいのありがとうございます。これからも楽しみにしています! (2017年5月6日 0時) (レス) id: 85d71dbfbe (このIDを非表示/違反報告)
浩鈴(プロフ) - Kさん» こんにちは!コメントありがとうございます(*^^*) GW中はコンスタントに更新出来ると思いますのでよろしくおねがいします。 (2017年5月2日 11時) (レス) id: 7e4fbd94f2 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - 以前一度コメントを残した者です^^更新分を仕事の前に読んでしまって、引き込まれすぎて「あぁ、、どうしよう( ; _ ; )」という気持ちになってしまいました笑 続きも楽しみに待っています^^ (2017年5月2日 10時) (レス) id: f654da7d4d (このIDを非表示/違反報告)
浩鈴(プロフ) - ゆうみさん» はじめまして!ありがとうございます。 コメント励みになります(*^^*) 半分は越えた…かな?まだまだ続きますのでよろしくお願いします! (2017年4月30日 14時) (レス) id: 7e4fbd94f2 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみ - 物語に引き込まれるようにどんどん読み進められます。とても面白いです!更新頑張ってください! (2017年4月30日 14時) (レス) id: c3179f3c1c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:浩鈴 | 作成日時:2017年4月13日 0時

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