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眠り姫 (12) ページ28

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「おかえりなさいませ、プロフェッサー」
高木が自分の部屋に戻ってくると、お手伝いアンドロイドがそれを出迎えた。
「ただいま」
お手伝いアンドロイドは、高木が差し出した上着を受け取り、ハンガーにかけて手早くブラシをかける。
「お食事は？」
「ああ、伊野尾くんと一緒にしてきた。コーヒーを頼めるかな」
「かしこまりました」
高木の部屋は、伊野尾・薮の部屋と違って、全く柔らかい色味がない。壁面に大きな液晶モニターが据え付けられており、その手前に山のように機材が積まれている。部屋の壁面に設置されている大きな棚には、骨董品と言ってもいい紙製の書籍や旧世紀のコンピューター機器が所狭しと並べられていた。 高木はいつものように大きなデスクの手前にある大きな背もたれのついた椅子に座る。
「どうぞ」
「ありがとう」
お手伝いアンドロイドは、大きなマグカップに入ったコーヒーを高木の前のデスクの上に置いた。デスクの上には雑多なものが積まれていて、コンピューターのキーボードの上とマグカップを置くだけの広さの分だけデスクの上に空間がある。一見、乱雑なデスクの上だったが、高木自身はどこに何があるかわかっているので、お手伝いアンドロイドも絶対にデスクの上は触らない。
「何か連絡は？」
「大学の秘書の方が、新学期からのカリキュラムの予定を出して欲しいと」
あちゃーと高木は顔をしかめる。
「いつまでか言ってた？」
「出来れば今日にでも欲しいとのことでしたが、秘書の方は一昨日にも連絡をいただいておりまして」
「あー…わかったわかった。明日中には何とかする。忘れてたら言ってくれ」
「かしこまりました、プロフェッサー」
「他には？」
「科学アカデミーの総会が明後日にありますが…忘れてはいらっしゃらないですよね？」
お手伝いアンドロイドもよくしたもので、マスターの高木の性格をよくわかっている。
「…忘れていたわけではないが…」
今回の総会で、論文をひとつ発表することになっているのは半年前から決まっていたことだ。
「何とかする」
低く唸った後に、それだけ答えた。
「はい」
お手伝いアンドロイドは小さく返事をして余計なことは何も言わない。




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