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そのタイミングで、背後から足音が聞こえた。
私と松川さんは揃って後ろを振り向いた。
国「あ、松川さん…おはようございます。」
その先には今度こそ、期待した姿があった。
松「国見か。早いな。」
国「目覚めちゃって。」
そんな会話を隣で交わしていた。
私は横でスゥッと空気を吸って、心臓を落ち着かせる。
『英くん…!』
国「…」
視線がゆっくりと自分に映る。
それだけで、勝手に心拍数が上がった。
声が震えないように、
自然に笑って、
頭の中はいつも通りを装うので精一杯だった。
『おはよう。』
私は、精一杯のいつも通りでそう言った。
国「…」
英くんと視線はあったまま。
期待。
それが自分を埋め尽くす。
国「…うん。おはよ。」
でも結局、英くんはフッと視線を逸らしてそう言っただけだった。
私がいつも通りを装っていった言葉は、いつも通り笑って帰っては来なかった。
視線すら合わせてもらえない。
それだけの事なのに、私の気持ちを沈めるのには充分で、さっきまでバクバクと動いていた心臓が今度はチクチクと痛んだ。
痛い。
痛いよ。
松「…」
国「じゃぁ、俺先に部室行ってますね。」
松「あ…うん。」
英くんは、松川さんにそう言ってその場を去った。
私は笑えなくてずっと俯いたまま、遠のく足音だけを聞いていた。
足音が何も聞こえなくなった後、また元通りドリンク作りに戻る。
流れていく水が、この気持ちごと流れていく事を期待して。
松「国見と…なんかあった?」
隣に立っていた松川さんがそう聞いてきた。
どうやら、私達は側から見てもおかしいようだ。
全然、何にも、いつも通りじゃない。
『…分からないんです。』
流れていく水は、気持ちは流してくれなかったけど、震える声は隠してくれた。
松「…」
松川さんは、それ以上何も聞いてこなかった。
それが、ありがたかった。
知らなかったんだ。
恋がこんなに難しくて、
こんなに辛くて、
こんなに痛いなんて。
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hiro(プロフ) - ひよひよさん» 本っっっ当に嬉しい!!応援されたら頑張っちゃいます( ̄^ ̄)ゞ (2020年10月2日 0時) (レス) id: e9391e3b89 (このIDを非表示/違反報告)
ひよひよ(プロフ) - 本っっっ当毎回面白い!!更新頑張ってください!応援してます! (2020年10月1日 17時) (レス) id: e32ea24965 (このIDを非表示/違反報告)
hiro(プロフ) - ゆゆさん» 多分告った…??チャイムが邪魔さえしなければ… (2020年9月23日 22時) (レス) id: e9391e3b89 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - 国見くん…!!!絶対告った!今絶対告ったよね!!!! (2020年9月23日 21時) (レス) id: 861ee0d781 (このIDを非表示/違反報告)
hiro(プロフ) - たかめいさん» もうちょっと上手く伏線貼れればいいんですけど、なかなか上手くいかないです…( ̄^ ̄)豚骨ラーメンの次に、塩ラーメンが好きです。 (2020年9月19日 13時) (レス) id: e9391e3b89 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:hiro | 作成日時:2020年8月18日 11時