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「ジュース買ってもいいですか?」


自動販売機を指す2年生の子に「どーぞどーぞ」っと場所を譲ると、「すみません・・・」と言いながら私の前に歩いてきた。

なんとなくその場を離れるタイミングを逃した私はそのまま立ち上がったベンチにまた座ってしまった。


「あの・・・・・・隣・・・・いいですか?」

私の隣の空いたスペースを指さした2年生の子に「あっっ うん どーぞ」と言って私は少し横にずって座った。



「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」


何とも言えない気まずい空気が流れる。
こんな時、砂羽ちゃんだったらうまく会話をつなげることができるんだろうけど・・・・・



「あの・・・・・ 留学するって・・・本当なんですか?」


気まずい空気を断ち切ってくれたのは2年生の子だった。


「あ・・・・・うん・・・・そうなの・・・・」

オレンジジュースの紙パックを見つめながら私は答えた。



「なんでですか? 博子先輩は内田先輩についていくって思ってました」


2年生の子のまっすぐな視線に思わず目をそらしてしまう。
ものすごくまっすぐな視線。


「・・・・・・・・・・えっと・・・・・」
「なんでですか? 内田先輩、茨木に行くんですよね? どうして茨木じゃなくて留学なんですか?」
「どうしてて・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

まっすぐな視線をそらさないまま、2年生の子はそのまま続ける。


「私、内田先輩が鹿島に入ったら絶対応援に行きます!」
「あ・・・・うん・・・」
「静岡と茨木だったら通えない距離じゃないですよね」
「あ・・・そうだね・・・・」


この子の言いたい事はよくわかった。


やっぱり篤人君の事、本気で好きなんだ。



この子の真剣な目を見ながら、胸がどんどん苦しくなってくる。



離れるってこういう事なんだよね・・・・
時間も、空気も、季節だって・・・・何もかもが今までとは全然違う。

会いたい時にすぐに会えない。

時間と距離、私は本当に頑張れる事ができるのかな・・・



「地元の知り合いが応援に来てくれたらきっと喜ぶよ」


ぎゅっと締め付けられた気持ちを抑えて私は言った。


本当はこんな事思ってない。
私だって応援に行きたいし、少しでも傍で篤人君のサッカーを見たい。
でも・・・・イギリスに行くって決めたから・・・



「なんか余裕って感じですね」



そう言って彼女はその場から走り去った。

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ひな(プロフ) - 空さん» 空さんいつものコメントありがとうございます。いろいろあってなかなか更新できてませんが、2人の事をこれからも見守ってくださいね (2016年3月12日 19時) (レス) id: 7fa1df6460 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 祝『5』内田くんと博子ちゃん見守ってます。続き楽しみにまってます。 (2015年10月23日 17時) (レス) id: 2458b5c8cb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ひな | 作成日時:2015年10月23日 16時

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