315.【10】流動食 ページ15
［雅にぃside］
体調の良い日は
屋上に出かけて行って
あらしに会うのを
楽しみにしている和。
笑うようになったし、声は出ないけど
口を動かして伝えてくれるようになって
意思の疎通も前よりできるようになった。
相変わらず、文字盤とホワイトボードは
「めんどくさい」って言って
使ってくれないけど…笑
でも、翔にぃが問診とかで「使って
教えて？」って言えば使うんだけどね。
だから進歩だね。
気管切開してから1週間が経ち
吸引や流動食にも慣れてきた。
吸引してから、流動食を入れてやる翔にぃ。
鼻に入れられているチューブから
胃に栄養が送られる。
胃に直接チューブを入れた方がラクかなって
話もあったんだけど、一ヶ月だけだから
傷を増やすのはやめようって話になった。
和は鼻にチューブが入った状態に
ある意味慣れているし、そこまで苦痛は
感じていないみたいだから、助かる。
そのかわり、入れられる時は全力で
拒否して嫌がるから可哀想だけどね…
衛生上、ある程度の期間で交換しないと
いけないから。
翔「和ー、この流動食終わったら
チューブ抜かせてね？」
和「なんで？」
翔「…交換する日だから。」
苦笑いの翔にぃ。
和「…」
和は翔にぃを睨んで、ぷいっと顔を背けた。
もう口パクすらしてくれない。笑
精一杯の「いやだ！」って合図だ。
可哀想だけど、
こうなったら強行突破するしかない…
翔「かずー、お願いだから抜かせてよ…
ほら、じっとしてて…」
智「こーら、そんな暴れたら
点滴絡まるって…」
2人の兄は、全力で拒否する弟に
完全にお手上げだ…
翔「抜くだけだから…な？」
和「うそつき！」
和の言う通りだ。
抜いたら、入れるんだから…
和は、翔にぃの罠にひっかかったりしない。笑
翔「おい！雅紀も笑ってないで手伝えよ！」
「あっ、いって！あひゃひゃ」
翔にぃに頭を小突かれた。
仕方ない、優しい雅兄ちゃんの実力を
見せてやるか。笑
「ねぇ〜、和。どんなに暴れてもさ、
にぃちゃん達には敵わないでしょ？」
和「でも、いや」
「嫌だけどさ、1週間くらいで交換しないと
いけないんだって。入院中に何回か
交換しなきゃだよ？毎回そうやって
暴れてたら疲れちゃうよ？」
和「…」
「押さえられて無理矢理は嫌でしょ？」
和「うん」
「ほら、押さえないから頑張ってごらん？」
俺と智にぃはベッドから少し離れた…
なんとか頑張ってくれないかなぁ…
翔「やっていい？」
和は頷いてくれた。
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作者名：空
| 作成日時：2013年1月16日 6時
