3229.【4】 ページ29
［先輩side］
吸引に鼻腔内洗浄。
せっかく辛いことを頑張っても、もし明日の治療を
サボってしまったら…
さらに辛い外科処置が翔くんを待っている。
だから、こいつは翔くんに『絶対逃げるな』と
追い討ちをかけているワケなんだけど…
耳「切開の傷が治ってない翌日から、今よりハードな
吸引治療…」
翔「…っ、は、い…」
ちょっと脅し過ぎ。笑
「鼻腔内洗浄だって…」って言葉がさらに続きそう
だったから…
「もう十分理解してるから。ストップ。笑」
耳「…はは！だな、ごめん！笑」
助け舟。
負担が少ない鼻腔内洗浄とはいえ、怖がりな翔くんは
体にガッチガチに力が入っているし、あんまり不安に
させることは、こいつには逆効果。
それは近くで関係を築いている俺に分かることだと
思ったから。
耳「よし、反対の鼻！」
翔「…っ、ちょっと…休憩…」
耳「駄目。まだ薬の吸入もあるんだから。とっとと
やらないと」
翔「…」
脅すことはなくなったものの、相変わらず厳しい
こいつに、翔くんの不安はピークって感じで。
蚊の鳴くような声で「…待って」って言いながら
鼻付近に手を持っていってしまった。
耳「駄目。やります！笑」
翔「…っ、ん〜…」
手をパシッと払い除けられてもなお、迫ってくる洗浄
チューブの方に手が伸びたから…
「すぐ終わるから。な？頑張ろう…」
翔「…も、う、やだ…」
「じっとしてたら、すぐ終わるから…」
翔「んん…」
手を軽く抑えておく。
これ以上痛い思いはしてほしくないし、早く終わりに
してやりたいから…
翔「んっ…んん…」
耳「口でゆっくり呼吸して」
翔「んっ、ん…」
それでも、チューブを入れる時はやっぱり辛そうで。
動きそうになる顔を俺も少し抑えて。
耳「大丈夫、すぐ入るから」
翔「んんっ…んっ…」
顎も軽く抑えられて…
目尻には薄っすらと涙が浮かんできた。
翔「ん…んん…っ、げほっ…」
耳「もう入ったから…動くと怪我するから…」
違和感が嫌なのか、もう我慢の限界なのか、翔くんが
顔を振ろうとする。
「翔くん？もう辛いの終わりだから。…な？
ゆっくり口で呼吸しよう」
翔「…」
「…ほら、一緒に…」
さっきよりさらに力が入ってしまった肩をさすり
ながら、声を掛け続ける。
顔を動かすことがないように固定しながら、手の
動きにも注意しつつ。笑
チューブ引っ張ったりしたら大変だからね。
今の翔くんなら、やりかねない。笑
「もう少しだから…頑張れ…」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4834人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：空
| 作成日時：2020年3月16日 21時
